猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
316 / 502
嘘でも何でも言ったもん勝ち エキゾチックショートヘアの話

道徳を持ち出すのは、我を押し通すため。

しおりを挟む
 ポカポカ日向ぼっこ日和です。
 お昼寝しようと思ったモモタが、空き地に通じるレンガの壁に空いた穴を通ろうとした時、前からどっしり猫が来ました。
 ちょうど2匹の猫がすれ違うことが出来る幅でしたので、モモタは少し端によってすれ違おうとしました。
 しかし、どっしり猫は真ん中をかっぽして来て言いました。
 「何でどかないの?どかないとぶつかるじゃない。
  もし俺が老い猫だったり子猫だったりしたら、危なくてどかないといけないじゃない」
 びっくりしたモモタが答えます。
 「僕はどいたよ、お互いがどき合わないといけないよ」
 すると、どっしり猫はモモタ以上に驚きます。
 レンガの穴をふさいだまま、説明を始めました。
 「老い猫にどけというの?君おかしいよ。
  いいかい、道は譲らないといけないんだよ、それが常識でしょ?
  どかないと尻もちついちゃうじゃない、あぶないよ」
 「僕はどいたのだから、来たのが君でなくて老い猫でも子猫でもぶつからないよ。
 「そんなの、今だから言えるんだろ?
  いいかい?もう一度言うよ?
  君が歩いてきたら、老い猫や子猫は危ないって思ってどかないといけなくなっちゃうでしょ」
 「僕は端に寄ったよ、真ん中を歩いている君はどかないの?
  そんなんじゃ、僕がどちらによっても通れないよ」
 呆れ顔のどっしり猫に、モモタが続けます。
 「自分が老い猫だったらっていうけど、逆だったらどう?
  君は真っ直ぐ来たよ、避けずに。
  なら僕が老い猫だったらぶつかっちゃうね」
 どっしり猫は、「分かんないやつだ」と捨て台詞を言って去りました。
 去ったのですが、2歩進んだかと思うと、振り返って言いました。
 「僕だったらどくよ、老い猫のためにね」
 呼び止められて、モモタはうんざりです。
 「君は僕を退かせたいだけでしょ?
  君が言っていることを君に当てはめると、君は君が言っていることに反しちゃうよ。
  君の言い方を借りると、こっちがもっと老人だったらどうするの?
  おんなじことばかり繰り返してるけど、ちゃんと理由を説明してよ」
 どっしり猫は、「分かんないやつだ」と捨て台詞を言って去ろうとしますが、またまた2歩進んだかかと思うと、振り返ってモモタを引きとめます。
 ですが、話す内容は最初と同じでした。
 モモタは、気持ちを抑えられなくて言っているだけだな、と思いました。
 言っても言い足りなくて戻ってきているのが、いい証拠です。
 モモタは、一言一言に対してちゃんと答えましたが、さっさと逃げるか怒ってみせるかしたほうが良いんだろうなぁ、と考えました。
 でも最後まで聞きました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

フラワーキャッチャー

東山未怜
児童書・童話
春、中学1年生の恵梨は登校中、車に轢かれそうになったところを転校生・咲也(さくや)に突き飛ばされて助けられる。 実は咲也は花が絶滅した魔法界に花を甦らせるため、人の心に咲く花を集めに人間界にやってきた、「フラワーキャッチャー」だった。 けれど助けられたときに、咲也の力は恵梨に移ってしまった。 これからは恵梨が咲也の代わりに、人の心の花を集めることが使命だと告げられる。   恵梨は魔法のペンダントを預けられ、戸惑いながらもフラワーキャッチャーとしてがんばりはじめる。 お目付け役のハチドリ・ブルーベルと、ケンカしつつも共に行動しながら。 クラスメートの女子・真希は、恵梨の親友だったものの、なぜか小学4年生のあるときから恵梨に冷たくなった。さらには、咲也と親しげな恵梨をライバル視する。 合唱祭のピアノ伴奏に決まった恵梨の友人・奏子(そうこ)は、飼い猫が死んだ悲しみからピアノが弾けなくなってしまって……。 児童向けのドキワクな現代ファンタジーを、お楽しみいただけたら♪

処理中です...