猫のモモタ

緒方宗谷

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嘘でも何でも言ったもん勝ち エキゾチックショートヘアの話

優しさにつけ込むためのひ弱さ

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 ある日、少し肌寒かったモモタは、気弱猫と一緒に車の上で日向ぼっこをしていました。
 すると、どっしりしたエキゾチックショートヘアがやって来て言いました。
 「寒いから日向を譲っておくれ」
 辺りを見渡すと、陽の光で暖まった車はこの車だけのようです。
 他の車はまだ日陰の中にありました。
 モモタは嫌だな、と思いましたが、相手は一回り大きいし言い争いたくありません。
 ですが、どうするか答える前に、どっしり猫は気弱猫の足の上にごろんとしました。
 「ほらほらどいて、ちょっとごめんよ」
 譲るかどうか迷っていた最中なのに、どっしり猫は返事を待ちません。
 強引に日向で横になろうとします。
 モモタは追い出されまいとして、慌てて身を固めて言いました。
 「わ、わ、わ、ちょっと僕がまだいるのに」
 どっしり猫は、ほんの少し毛が逆立ったモモタをチラリと見ましたが、知らんぷり。
 隣にいた気弱猫は、一番暖かい場所から追い出されてしまいました。
 どっしり猫が、横柄に言いました。
 「や―ありがとう、とても嬉しいよ、とても感謝だよ。
  いつかお礼はするからさ」
 そう言われた気弱猫は、笑うしかありません。
 「そんなに寒かったのなら仕方ないよね。
  僕は少し暖かくなったから大丈夫だよ」
 「悪いね、僕も温まったら呼んであげるから、どっかで遊んでおいで」
 そう言って、どっしり猫は気弱猫を見送りもせずに丸まりました。
 モモタはしばらく様子を見ていましたが、一向に気弱猫と交代する様子がありません。
 そこでモモタが聞きました。
 「実は寒くなかったでしょう?
  丸々してるし、あの痩せた子のほうが寒がってるはずだよ」
 「何言っているんだ、僕は本当に寒いんだよ、ああ寒い寒い」
 どっしり猫は急に震え出します。続けて言いました。
 「もし僕が風邪をひいていたらどうするって言うんだい?
  病猫なのに日向で寝かせてくれないって言うのかい?」
 「そんなことないよ、ぶるぶる震えてかわいそうだもん」
 「そうだろう?じゃああの痩せ猫がどいてくれても不思議じゃあないよな」
 なんかおかしいなぁ、とモモタは思いました。
 確かに風邪をひいている猫には譲ります。ですが何かが違うのです。
 感じている同情の向かわせる先がありません。
 どっしり猫が言っていることは心に響きましたが、なぜか違和感がありました。

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