猫のモモタ

緒方宗谷

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目には目を歯には歯を! ロシアンブルーの話

善意の悪意

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 いつもの様に、どっしり猫にからまれたモモタは、同じことを繰り返し言う彼に対して、1つ1つ丁寧に説明をしていました。
 それをつぶさに見ていたロシアンブルーのマイちゃんは、どっしり猫が去った後に、モモタのところにやって来て、お話をしました。
 「モモタもよくやるね、怒ってやればいいのに」
 「うーん、でもどっしり猫の言うことも分からなくないんだよ」
 それを聞いてびっくりするマイちゃんに、モモタは言います。
 「どっしり猫には、老い猫を想う優しい気持ちがあるでしょ?
  僕を押しのけるために利用しているだけだと思ってたけど、もしかしたらとても優しい猫なのかもしれないね。
  もしかしたら、優しすぎて半分しかどかない僕に怒っているのかも」
 「だからって、半分どいているモモタに怒るのもおかしな話ね」
 「そうだけど、どっしり猫が、もし自分自身にも同じような目で見れるようになれば、とても立派な猫になると思うんだ」
 モモタが真剣にそう言うと、マイちゃんが笑います。
 「あはははは、そんなことないわ、
  そんなことしたら、ますます付け上がって、モモタをどけようとするだけよ」
 「なんでそうなるの?どっしり猫だって、お互い譲り合って、すれ違う時に挨拶し合うと幸せになれるはずだよ」
 「そう思っているのは、君だけよ。
  善意なんて帰ってこない。
  君が善意を見せれば、どっしり猫も善意を見せるなんて幻想よ」
 「えぇ?そんなことないよ、誠意を見せれば必ず誠意を返してくれるよ」
 「じゃあ、モモタの誠意にどっしり猫はどう答えたの?」
 モモタは考え込みます。
 それを見たマイちゃんは言いました。
 「始まりはどうだったか知らないけれど、想像がつくわ。
  だんだんと悪い方になって来たんじゃないかしら。
  モモタの説明だと、どっしり猫はとてもいい子に聞こえるけれど、最近わたしが見ている限りでは、ワザとモモタにとうせんぼしているように思えるわ」
 確かにそうです。今日モモタが左端に寄ったとき、どっしり猫はいつもの様に真ん中に立っていましたが、モモタが隙をついて右から通り抜けようとすると、すかさず右の隙間を塞いで、モモタが通り抜けるのを遮ったのです。
 マイちゃんは、別れ際に言いました。
 「あのサバトラの子みたいにならないように気を付けてね」
 モモタは少し心配になりました。


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