猫のモモタ

緒方宗谷

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海に面した水族館のお友だち

知っているのと知らないのでは、出来ることは違うもの

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 ザッパ~ン、ザッパ~ン、と豪快な水しぶきを立てて、大人気のイルカショーが開催されています。
 とても沢山の人が集まって歓声をあげているので、モモタは何が行われているのかと興味津々で行ってみました。
 ボールを放ったり、フラフープをくぐったりしています。
 モモタがとてもびっくりしたのは、お魚なのに自分より高く飛んだり、お馬のように人をのせて速く泳いだりしている事でした。
 お客さんの女の子のホッペにキスをしたのもびっくりです。
 だって海のお友達で、こんなに人間と仲が良いを見るのは、初めてだったからです。
 でも最後にイルカは陸に上がるように言われて、ポーズをとらされました。
 短い時間でしたが、モモタには信じられません。だって、お魚は陸では生きていけないからです。
 海の中の生き物なのに、人間に陸に上がるように言われる2頭イルカを見て、モモタは可愛そうになりました。
 モモタは、お家に戻ったイルカに訊きました。
 「イルカさん大丈夫?もしかして人間にイジメられてるの?」
 男の子のリュー君が言いました。
 「イジメられている?なんでさ?」
 「だって、お魚なのに陸に上がらせられていたでしょう?
  もしかしたら、握手もチュ-も嫌々やらされてるのかと思ったんだ」
 女の子のアンちゃんがやって来て笑います。
 「トレーナーのマユちゃんはとても優しい子よ。
  ちょっとおっちょこちょいだけどね」
 モモタはまだ信じられません。
 「じゃあ、リュー君もアンちゃんもつらくないの?陸に上がったら苦しいのに」
 リュー君は答えて言いました。
 「僕たちは水の中で生活しているから、人といないと陸に上がる機会は無いけどね。 
  でも陸を知ることは、とてもいい勉強になったよ。
  陸に上がったことで、僕たちの体が重いってことを知ったし、乾くと痛いってことも知った。
  前は、胸ヒレや尾ヒレがない陸の生き物を見て、ヒレがないなんて変なのって思っていたけれど、陸に出てみて足があるってすごいんだなぁって思えるようになったんだ。
  僕たちの尾ヒレはすごいけど、陸は歩けない。
  それで、知らないことはなんて愚かなんだろうって初めて知ったんだ。
  とてもびっくりしたよ。
  ボールやフラフープで遊ぼうにもその遊び方を知らなければ遊べないし、自分で遊びを作ろうにも、飛んだり跳ねたり、どう泳げば陸に上がれるか知らなければ、遊ぶ方法もおのずと限定されてしまうじゃない?」
 確かにそうです。
 感心しているモモタに、アンちゃんが言いました。
 「そもそもわたしたちお魚じゃないわ」
 「そうなの?」
 「そうよ、だから水の中じゃ息出来ないの」
 「ええっ!?」
 モモタはびっくりして、ぴょんと飛び跳ねました。
 リュー君が笑いました。
 「知るって大事なことでしょう?」
 知らないことで心にできる石ころもあるんだなぁ、と思うモモタでした。


 
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