猫のモモタ

緒方宗谷

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コンクリートZOOのお友達

希望がないとどうなるの?

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 モモタが柵の外からキリンを呼びました。
 「キリンさーん、キリンさんは何でそんなに首が長いの?」
 「知らないよ、生まれた時から長いんだから」
 キリンは素っ気ない態度をとりました。
 それでもモモタは興味津々でウロウロしています。
 見かねたキリンか 言いました。
 「猫君、そんなに僕の首が長いのが気になるかい?」
 「うん、僕高いところが大好きだから、遠くが見れて羨ましいなぁって思うんだ」
 キリンはビックリして訊き返しました。
 「羨ましい?羨ましいなんてあるもんか。
  背高のっぽなばっかりに、僕は動物園一不幸なんだから」
 「ええ?何で不幸なの?
 「こっちへおいで」
 キリンは柵の方に首を倒してくれたので、モモタはひょいっと飛び乗りました。
 ゆっくりと首を起こしたキリンの上で、モモタは大はしゃぎ。
 でもキリンは言いました。
 「遠くが見えるなんて不幸でしかない。
  僕はこんなに体が大きいのに、こんな狭いところにいる。
  ここから出たくて遠くを見るけど、周りも柵やオリだらけ、ずっと向こうは塀に囲まれている。
  その向こうは箱だらけ、たくさんの人間が閉じ込められているよ。
  結局どこに行ってもみんな閉じ込められているんだ」
 「本当だ」
 「遠くを見られない動物たちを見てごらん。
  みんな、オリの外に世界が広がっているなんて分からないのさ」
 「オリの外見えてるのに?」
 「ああ、見てないよ」
 「たまに気が付いて、上手くオリから出る者もいるけどね。
  でも外も似たようなものだから、また戻って来るよ」
 モモタは、十分に景色を堪能してから言いました。
 「自由に出入りできたら良いのにね」
 「いや、それじゃだめなんだよ、知らないのが良いのさ。
  知ってしまったら戻れなくなるし、戻れなくなったらノラになっちゃうし」
 モモタは言いました。
 「ノラが大変なのはそうだけど、けっこうみんな幸せだよ」
 「幸せと思わなきゃやっていけないだろ?不幸だよ明らかに。
  君は家猫だろ?人間からご飯をもらわずにここまでやってこれたと思う?」
 「ムリだと思う」
 「君だって、ご主人様のお家から出たばっかりに、いつ戻れるか分からない旅行に出かけてここまで来たんだろ?
  でも家猫である事も捨てたくないってことは、やっぱり家にいる方が幸せなんだよ」
 広い世界を知って、それがどこまでも続いていると思えるモモタは、広い世界は狭く囲われていると思っているキリンの考え方が不思議でなりません。 
 ただ、1つだけ分かったことがあります。自由に海へ行ったり山へ行ったりできるし、色々なお家にお世話になれることに、改めて幸せを感じたことです。
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