猫のモモタ

緒方宗谷

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愛情たっぷりキツネの話

力だけが強さじゃないよ

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 山の奥の方に行くと、キツネの親子が住んでいます。
 今日のモモタは、2匹の野ネズミと追いかけっこして勝ったので、その1匹をあげに行きました。
 親キツネが子キツネに言いした。
 「もう私の事は良いから、自分の巣を持ってお嫁さんをもらいなさい」
 「何言っているの、お母さんを見捨てるんてできないよ」
 「でも、私がいるばかりに、あなたは取ってきたネズミを丸々1匹食べることすら出来やしない。
  巣立てば丸々食べれるのに」
 「せっかく生んで育ててくれたのに、お返ししないなんておかしいよ。
  確かに1匹食べられないかもしれないけれど、半分は食べられるんだ。
  お腹いっぱいにはならないけれど、空腹でもないさ」
 そう言って、子キツネは狩りに出かけて行きました。
 そこにやって来たモモタが言います。
 「キツネさんこんにちは。
  僕、今日はおばあちゃんのお家で缶詰食べて、山でお魚食べてネズミも食べたから、1匹あげる」
 親キツネは喜んで言いました。
 「まあまあ、モモタちゃん、ありがとう。
  あの子が帰ってきたらご馳走になりますね」
 モモタは、子きつねが戻って来るまで、フワフワ気持ちいい親キツネの尻尾にじゃれて遊ばせてもらいます。
 ふにゃふにゃふにゃにゃ、と戯れるモモタに、親ギツネが言いました。
 「はぁ、独り立ちできないなんて、なんてあの子は弱い子なんでしょう」
 「どうして?親孝行ないいキツネじゃない」
 「山の中は厳しいから、私を見捨てられるくらい強くないと生きていけないわ」
 モモタは考えて言いました。
 「逆なんじゃないかな?コンちゃんは強いから、ママと一緒にいられるんじゃないかな?
  だって、山のお友達はみんな独り立ちしたら、親子でもご飯を奪い合ってるよ。
  でもそれをしなくても生活していけるのは、2匹が強いからだよ」
 「でも、お腹いっぱいのご飯が食べられた方が良いでしょう?」
 「それはそうだけど、優しい親子だから、僕ここまで遊びに来るんだよ。
  だってキツネは下の方にも住んでるもん。
  どんなにお腹いっぱいでも、心がペコペコだったら楽しくないよ」
 母キツネは、とても優しい笑顔になりました。そして、フワフワ尻尾でモモタを包んでくれました。



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