猫のモモタ

緒方宗谷

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自分で自分を認められない白鳥の話

マイナスプラス、でもマイナス

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 最近の池の周りはベビーブーム。カモやアヒルのヒナたちが「ガアガア」楽しそうに遊んでいます。
 その中には白鳥のヒナもいたのですが、何かみんなと違いました。
 遠くからショニー君の声が聞こえてきます。
 「坊やたち、みんな僕の子供なんだから、もっと白鳥らしく泳がないとダメだよ。
  そんな遊んでいる様に泳いでいたら、立派な白鳥になれないぞ。
  ほら、ガガモが遊びに来たけど遊んじゃいけないよ。
  僕たちは白鳥だから、優雅なるお勉強のために遊んでばかりのガガモとは遊んじゃいけないんだよ」
 子供たちは、毎日の様にいろいろ言われて大変そうです。悪い事をしているわけでもないのに、お小言を聞かされているみたいで、とても疲れていました。
 モモタは、水辺で休んでいたショニー君の子供たちに声をかけました。
 「こんにちは、初めましてだね。
  あんなに小さかったショニー君がもうお父さんだなんてすごいなぁ。
  僕なんてまだ子供なのに、こんなに早く立派になっちゃうなんて」
 「うーん、立派なのかなぁ。
  あれやっちゃいけないこれやっちゃいけない、何でも思い通りにしようとして、僕たちは大迷惑だよ。
  あげくの果てに、黒い羽をむしられて白くしろだって」
 しばらくお話ししていたら、ショニー君が子供達を呼ぶ声が聞こえてきたので、みんなはお父さんのところに帰っていきました。
 ショニー君は子供たちを集めて言いました。
 「黒い羽なんて不良みたい、困っちゃうなー、僕頑張っているのになー」
 離れたところにいるモモタにも聞こえるほど大きな声です。さらにチラチラこちらを見ています。
 モモタはすぐに気が付きました。ショニー君は同情してほしいのです。モモタは気が付かないふりをして帰りました。
 子供たちが自分でご飯を捕れるようになると、さっさと一家全員お家から出て行く準備を始めます。旅行に出掛けるようでした。みんなで一緒に北へ向けて飛んで行くようです。
 モモタはお見送りに来ました。
 「みんな、初めての北国旅行でしょ?気を付けてね」
 「うん、上手く飛べるか分からないけど、がんばるよ」
 白鳥の子供たちは心配そうです。それもそのはず。教育熱心なパパが、早く白い羽を生やそうと黒い羽をむしってしまったので、白い羽も生え揃わなかったのです。ところどころ羽のないところがありました。
 ショニー君は、子供たちの門出を自慢したくてソワソワしています。みんなに注目してほしそーです。家族団欒なはずなのに、何でか独りぽっちになっちゃいました。




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