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弱さを知って強くなれたオオタカのキキ
ホコリを誇りに変えるには
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キキとカラスの取っ組み合いを見ているみんなは、息をのみます。
一回りも二回りも大きなカラスが、まだ小さいオオタカの赤ちゃんにタカ掴みにされてもがいています。
王者が見せる貫録に、カラスは全身を突っ張らせて動けなくなってしまいました。鳴く事すら出来ません。
ご飯にしようとしていたみんなは、身構えました。
我に返ったカラスは、何とか爪から逃れて、ほうほうのていで木の上に飛んでいって、鳴きました。
「いてて、ひどい目に遭った。
見てよ、この傷、体に穴が開いちゃったよ」
何本もの羽が折れています。キキの周りには、黒い羽がたくさん散らばっていました。
自業自得ですが、とても痛々しい姿に、みんな同情しました。
それと同時に、もし安易に襲いかかろうものなら、自分もああなると悟りました。下手にごはんにしようとすると、逆にご飯にされてしまいます。
キキはとても怖くて、おもらししそうでしたが、フンッ、他愛もない、といった表情で本心を隠しています。
みんな気が付かずに、さすが空の王者オオタカの子供だ、と感心しました。
騒ぎを聞きつけて急いでやって来たモモタは、キキのそばに寄りそいます。キキを食べようとするほどのお友だち相手では、モモタがいくら頑張っても守りきれません。
モモタは、通りかかった紋白蝶に、騙され犬のワンちゃんと、親孝行のキツネさん、それと、イタチのユキちゃんとムーちゃんを呼びにいってもらうことにしました。
待っている間に、モモタは訊きました
「助けてママーって呼ばないの?
空にはタカが飛んでいるから、もしかしたら助けてくれるかもしれないし、助けてくれなくてもママを呼んでくれるかもしれないよ」
「なんで僕がそんなこと。僕は空の王者だよ。王者は泣き言なんて言わないんだよ。何度言ったら分かってくれるのかな」
モモタが寄りそってくれてホッとするキキでしたが、お礼も言わずにそう言いました。
心では、お礼も言わない自分を情けないと思いましたが、王者としての誇りがのどに詰まって、言葉が出ません。
タヌキに騙されたときといい、今回といい、誇りのせいで危うく食べられてしまうところでした。モモタの言う通りだ、と反省していましたが、言えません。その代り他の言い方をしました。
「アイツら、カラスのくせに僕たちに勝てる気でいるのかな?」
モモタは、カラスに勝てる気がしませんでしたが、幼くてもキキなら勝てるかも、と思いました。
「キキ、心配しなくても、もうすぐお友だちが来るから、安心してね」
「ああ、心配なんてするもんか。僕はとっても強いオオタカなんだから」
モモタは、ガタガタ震えながらもそう言うキキを見て、さすがオオタカだ、と感心しました。
それと同時に、自分のことを仲間だと思ってくれていることに嬉しく思いました。
キキはキキで、モモタの言葉にホッと胸をなでおろします。犬とキツネとイタチが来てくれれば百匹力です。彼らはクマとイノシシとスズメバチ以外になら、そうそう負けません。
でもケンカしたくないなぁ、と思っています。それでもキキはそう言うそぶりを見せません。ケンカする気満々です。だって僕はオオタカだから。空の王者オオタカなんだから。
自分でそう思うことによって、周りにそう思われることによって、キキは、本当の空の王者オオタカへと成長していくのです。
一回りも二回りも大きなカラスが、まだ小さいオオタカの赤ちゃんにタカ掴みにされてもがいています。
王者が見せる貫録に、カラスは全身を突っ張らせて動けなくなってしまいました。鳴く事すら出来ません。
ご飯にしようとしていたみんなは、身構えました。
我に返ったカラスは、何とか爪から逃れて、ほうほうのていで木の上に飛んでいって、鳴きました。
「いてて、ひどい目に遭った。
見てよ、この傷、体に穴が開いちゃったよ」
何本もの羽が折れています。キキの周りには、黒い羽がたくさん散らばっていました。
自業自得ですが、とても痛々しい姿に、みんな同情しました。
それと同時に、もし安易に襲いかかろうものなら、自分もああなると悟りました。下手にごはんにしようとすると、逆にご飯にされてしまいます。
キキはとても怖くて、おもらししそうでしたが、フンッ、他愛もない、といった表情で本心を隠しています。
みんな気が付かずに、さすが空の王者オオタカの子供だ、と感心しました。
騒ぎを聞きつけて急いでやって来たモモタは、キキのそばに寄りそいます。キキを食べようとするほどのお友だち相手では、モモタがいくら頑張っても守りきれません。
モモタは、通りかかった紋白蝶に、騙され犬のワンちゃんと、親孝行のキツネさん、それと、イタチのユキちゃんとムーちゃんを呼びにいってもらうことにしました。
待っている間に、モモタは訊きました
「助けてママーって呼ばないの?
空にはタカが飛んでいるから、もしかしたら助けてくれるかもしれないし、助けてくれなくてもママを呼んでくれるかもしれないよ」
「なんで僕がそんなこと。僕は空の王者だよ。王者は泣き言なんて言わないんだよ。何度言ったら分かってくれるのかな」
モモタが寄りそってくれてホッとするキキでしたが、お礼も言わずにそう言いました。
心では、お礼も言わない自分を情けないと思いましたが、王者としての誇りがのどに詰まって、言葉が出ません。
タヌキに騙されたときといい、今回といい、誇りのせいで危うく食べられてしまうところでした。モモタの言う通りだ、と反省していましたが、言えません。その代り他の言い方をしました。
「アイツら、カラスのくせに僕たちに勝てる気でいるのかな?」
モモタは、カラスに勝てる気がしませんでしたが、幼くてもキキなら勝てるかも、と思いました。
「キキ、心配しなくても、もうすぐお友だちが来るから、安心してね」
「ああ、心配なんてするもんか。僕はとっても強いオオタカなんだから」
モモタは、ガタガタ震えながらもそう言うキキを見て、さすがオオタカだ、と感心しました。
それと同時に、自分のことを仲間だと思ってくれていることに嬉しく思いました。
キキはキキで、モモタの言葉にホッと胸をなでおろします。犬とキツネとイタチが来てくれれば百匹力です。彼らはクマとイノシシとスズメバチ以外になら、そうそう負けません。
でもケンカしたくないなぁ、と思っています。それでもキキはそう言うそぶりを見せません。ケンカする気満々です。だって僕はオオタカだから。空の王者オオタカなんだから。
自分でそう思うことによって、周りにそう思われることによって、キキは、本当の空の王者オオタカへと成長していくのです。
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