猫のモモタ

緒方宗谷

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樹海に住むお友達

一番下、ひっくり返せば一番上

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 モモタは怯えていました。帰り道が分からなくなって、とても深い森の奥の奥へと迷い込んでしまったのです。 
 「この道って、誰が作ったんだろう?」
 今いるところはけもの道。いろんなお友達が往来してきたはずなのです。
 ですが、ついている匂いは1つしかありません。ウサギでもキツネでも犬でもありません。
 大きな椎の木の幹には、鋭い爪あとがついています。中にはとても固くて太い毛がついた木もありました。
 太い枝が折れています。自然に折れたのでしょうか。いいえ違います。熊です。この道は恐ろしい熊が作った道なのです。
 道の向こうから、熊の匂いがしてきます。まだ新しいうんちの匂いでした。
 怖くなったモモタが、今来た道を戻ろうと後ろを振り返ったとき、「待てよ」と言う声がが聞こえてきて、動けなくなってしまいました。
 モモタは振り向きましたが、誰もいません。今熊がいるという匂いはしませんでしたから、恐る恐る探してみました。
 小さく丸まってキョロキョロしていると、また声が聞こえてきます。
 「俺たちが怖いんだろ?怖くないならこっちに来て遊んでいけよ」
 「ここいら辺で猫なんて珍しいな」
 良く見ると、熊のうんちをお布団にして、数匹のウジがゴロゴロしていました。
 「おうい、猫~、猫よ~い、美味しいもの分けてやるからこっち来いよ~」
 「むりさ、あんなに怯えちゃって、俺たちの仲間になんかなれないさ」
 「そうだよ、どうせうんこの中では生きていけない小者なんだからさ」
 モモタは、何だかいやな気分になりました。それを表情で読み取ったウジたちは続けます。
 「さっき見た?あの猫、トカゲのしっぽなんて食べていたよ」
 「マジで?あんなの食べてるの?うんこ食えよ、うんこ。
  世界の3大美食は、うんこ、ゲロ、腐肉だぞ」
 モモタは気持ち悪くなってきましたが、あんな小さな虫に負かされるなんてカッコ悪い、と思いました。
 ですから、モモタは逃げません。素知らぬ顔でけもの道を進んで行きます。
 やって来るモモタに注目していたウジの1匹が言いました。
 「お、首輪に何かぶら下げてるぞ」
 「あの袋、何入ってんだ?」
 「ああ、聞いたことあるぞ。あれ、猫のおやつだ。
  丸くてカリコリした食べ物だって」
 お世話になっているお家の女の子が、「おやつに食べて」ってくれた美味しいおやつです。
 「カリコリごはんが好きな奴いるの?そんなの好きな奴の気がしれない」
 モモタは、猫ちゃんのカリコリごはんが大好きなので、居たたまれない気持ちになりました。辛くて辛くて、駆け足でその場を離れました。
 情けないと思ったモモタでしたが、後ろを振り返る事すら出来ません。
 きっとウジたちは僕を見て笑っているのだろう、と思いました。








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