猫のモモタ

緒方宗谷

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山間の集落で出会ったお友達

やっぱりお家が一番良いな

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 「ミャオゥー、ミャオゥ―」
 どこからともなく、女の子の悲痛な叫びが聞こえます。大変だ、と思ったモモタは、急いで鳴き声が聞こえる方へ走りました。
 TAMAと書かれたピンク色のゲージに入れられた猫が、飼い主のお兄さんに連れられて自転車でどこかへ連れて行かれるようです。
 「助けてー!助けてー!」
 自転車のかごの上に乗せられたゲージの中で、タマちゃんが助けを呼んでいます。
 モモタは自転車に駆け寄って、タマちゃんに声をかけました。
 「どうしたの?」
 「分からないわ。もしかしたら、わたし捨てられてしまうのかも」
 訊くと、昨日ご主人様の夕食だったサンマを食べてしまったらしいのです。
 ここは山間にありましたから、夜になると食べ物を求めて熊が来ることもありました。
 ですから、山に捨てられたらどうなってしまうんだろうと、タマちゃんは悲しんでいます。
 「捨てられても大丈夫だよ、僕が助けてあげるよ」
 そう言って、モモタは自転車を追いかけました。
 自転車はとっても早くて、モモタは追いつけません。幾つかの峠を越えて、すいすい行ってしまいます。
 モモタは、すぐに自転車を見失いましたが、一本道だったので、とりあえず方角だけは分かりました。
 山が開けると、田んぼが広がっています。モモタは田んぼに住むお友達にピンクのゲージに入れられたタマちゃんのことを訪ねながら、走って行きました。
 ようやく自転車を見つけました。ペットの床屋さんと書いてあります。モモタは、ここが何をする場所か分かりません。
 お店から出てきたタマちゃんのご主人様は、タマちゃんを連れてはいませんでした。
 モモタが、空いていた窓から中に入ると、大きなオリの中に、猫が一匹ずつ入っています。お昼寝している子や、遊んでいる子など色々です。
 実は次の日から、タマちゃんのご主人様は旅行の予定。ペットは連れていけないので、タマちゃんはペットホテルにご宿泊だったのです。
 色々な猫ちゃんがいっぱいいます。お店の人に見つからない様にしながら、モモタは玉ちゃんに駆け寄って言いました。
 「タマちゃん、大丈夫?」
 「うん、大丈夫よ。みんなにここがどこなのか聞いたら、おしゃれしたりお泊り会するところだって。なんか楽しそうだわ。
  ごはんだって、とても豪華なんだって。さっきお昼ご飯の時間だったらしいんだけど、聞いてびっくりしちゃった。
  しっとりしたツナの上にカニが乗ってて、タイのチュルチュルがかかっていたんですって」
 モモタは、聞いただけでよだれが出てきました。
 みんなの言うことは、嘘ではないようです。本当にお家にいるよりもペットホテルは豪華です。
 ごはんもとても美味しいし、シャワーも熱くないので至れり尽くせり。お布団もふんわり寝心地最高。タマちゃんはお姫様気分です。
 毎日玉ちゃんのところに通ってお話を聞くモモタは、とても羨ましく思いました。
 三日後、ご主人様がようやく帰って来て、タマちゃんを迎えに来てくれました。
 お家に戻ってきたタマちゃんに、モモタは訊きました。
 「あんなに快適なお泊り会なら、もうお家に戻りたくないんじゃないの?」
 「ううん、そんなことないわ。 
  どんなに豊かでも閉じ込められているのはイヤ。貧しくても自由なほうが良いな」
 自由ってとっても大事ですね。
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