猫のモモタ

緒方宗谷

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世界の中心、揚羽蝶の話

頭の中はごった煮スープ

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 アゲハちゃんが住むログハウスの軒下に、大スズメバチの若き女王がやってきて、お庭にいる虫たちに言いました。
 「ここはこれからわたしたちのお家にするわ、だからみんな出ていきなさい。
  もし出ていかないなら、みんなわたしたちのご飯にしちゃうんだから」
 誰も何も言えない中で、アゲハちゃんだけが1匹飛んで行って、プリプリ怒って言いました。
 「どういう理由で私達を追い出すっていうのよ。
  説明してみなさいよ」
 「説明するまでもないわ。
  出ていきなさいって言ったら出ていきなさいよ」
 「どこの蝶々もお花の蜜をなめて生活しているのよ。
  だから、お花は蝶々のためにあるの。
  お花のそばには蝶々がいるって相場は決まってるんだから、わたしたちは出ていく必要なんてないわ」
 大スズメバチの女王は鼻で笑います。
 「こんなすてきなお庭にあなたたちが相応しくないなんて、みんな言わないだけで思ってるわよ。
  そういうの察しなさいよ。察せられないなら出ていきなさい」
 「察するのはあなたのほうよ。
  蜜をなめないあなたたちがお花のお庭に住むなんて、可笑しすぎておへそでお茶が沸いちゃうわ。
  お花はわたしたちには必要なんだから、このお庭はわたしたちのものよ」
 「何度言っても分からないのね。
  出ていくべきと言ったら出ていくべきなのに」
 「じゃあなに?ちゃんとした出ていく理由を言ってごらんなさいよ」
 「わたしたちが住みたいから、わたしたちのために出ていくべきなのよ」
 胸を張ってそう言う大スズメバチの女王に、今度はアゲハちゃんが鼻で笑いました。
 「それわたしたちが出ていくべき理由じゃなくて、わたしたちに出て行ってほしい理由でしょ?
  それなら、おんなじ理由でわたしたちは出て行かないわ。
  わたしたちは住み続けたいから、あなた達はここに住むべきじゃないのよ。
  わたしたちがここに住み続けちゃいけない理由は何?無いんでしょう?それが理由よ」
 離れたところで、紋黄蝶たちも「そうだそうだ」とはやし立てます。
 やんややんや、といううるさい声に、キーッ、となった大スズメバチの女王が怒鳴り出します。
 「なんてわがままなことを言うのよ!こないだだって、ダメダメだなんてわけのわからないことをうちの子たちに言って、みんなを困らせたでしょう!?
  子供じゃないんだから、そういうのやめなさいよ!!」
 「わたしが訳の分からないことを言ったんじゃないわ。
  あなたたちにおバカちゃんだったから、訳が分からなかったのよ、あんぽんたん」
 「なによ!すかぽんたんめ」
 「あっかんべー」
 もはや悪口合戦です。とても話し合いの場には見えません。でもアゲハちゃんらしいペースになりました。
 モモタは思いました。 
 「ワザとは針より強し」



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