猫のモモタ

緒方宗谷

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生まれ変わりたい黄丸の話

一歩一歩が最初の一歩

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 峠の入り口にある石材屋さんの前に、小さなイチゴのお庭がありました。
 ちょうどモモタがそのお庭の前を歩いていると、フィーナちゃんが声をかけてきました。
 「モモタくん、ちょっと乗せてって」
 「あれれ?フィーナちゃん、こんなところまでお散歩に来たの?」
 「うん、そうよ。私、イチゴのお花が咲く頃だから、蜜を取りに来たの」
 帰りはモモちゃんバスに揺られて、今日の収穫を味見しよう、というのです。
 モモタは、頭の上をかしてあげました。
 フィーナちゃんが楽しくおしゃべりを始めます。
 「みんながツツジのお花の蜜を取っている時に、わたしは他のお花の蜜も味見して回っているの。
  お花って、種類によって咲く時期が違うのよ。
  冬にだって咲いているお花もあるんだから。
  そういうことを知ると不思議よね、何でわたしたち、いつもツツジの花からしか蜜を集めないのかしら?
  いつも温かくなってから蜜を集めるけれども、寒い時も集められたら、もっといろんなお味を楽しめるし、集める量も増えるのに」
 モモタは言いました。
 「でも、遠くに行けば疲れるし、寒ければ凍えちゃうよ」
 「そうしてみた蜂を知っているの?」
 「ううん、知らないけれど、いないってことは無理なんじゃないの?」
 「やってもいない内に決めてはダメよ。
  いないってことは、花の蜜はほったらかしなんだから、取りたい放題よ。
  こんど、やってみようかしら?」
 「やめておきなよ、蜜蜂だって冬はお家でゆっくりしているよ」
 「本当?やったー、いいこと知っちゃった。蜜蜂に勝てるかも」
 モモタは、そういえば、と思いました。
 「蜜蜂さんたちは、とても遠くまで花を探しに行くね。
  色々な花の蜜を集めてくるんだ」
 「でしょうね、この辺りのお庭のツツジツアーしかしないわたしたちとは大違いだわ。
  みんなは、“蜜蜂はみんなができないことをする”と言うけれど、わたしたち黄丸だって飛べるんだから、お庭の外に飛んで行けるのにね」
 フィーナちゃんの言う通りです。
 モモタがお家から歩み出した1歩は、今日まで続いて来た最初の1歩です。
 そして、今踏み出した1歩も、最初の1歩と同じ1歩です。


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