猫のモモタ

緒方宗谷

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アリ

物の価値ってほんとの価値なの?

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 モモタは、とても嫌な気持ちでアリたちを見ていました。
 あんなに、ジュース、シュース、と言ってアブラムシをつついていたのに、今は手のひらを反して、アブラムシなんか知らんぷりです。
 モモタは、アリに言いました。
 「あんなにアブラムシのジュース飲まなくてもよかったんじゃない?
  ここの菜園には、甘い実もあるんだから。
  みんなが飲みたがるから、アブラムシは一生懸命葉っぱを食べて、葉っぱがなくなっちゃったんだよ」
 「僕たちは、アブラムシに無理にジュースを出してくれなんて頼んでいないよ。
  彼らが飲んでほしがるから、お呼ばれしてお茶会を開いていたんだよ。
  彼らが望んだことなんだよ」
 「それでも、お茶会楽しかったでしょ?
  お礼に、お引っ越しを手伝ってあげたら?」
 「何のために?」
 「何のためにって、お友達でしょう?」
 「友達なんかじゃないさ。
  ジュースをくれるから一緒にいただけだよ。
  引っ越し中はジュースくれないから、お手伝いするなんてやーだね」
 そう言ったアリたちは、右往左往するアブラムシを放っておいて、虫探しのツアーに出かけていきました。
 それを知ったテントウムシたちがやって来て、パクパクパクパク、アブラムシを食べていきます。
 しばらくして、お腹いっぱいになったテントウムシは帰っていきました。
 「お夕食にまた来るからねー」
 そう言って、バイバイをして飛んで行きます。
 ごはんにならなかったアブラムシたちは、なんとか畑の外まで歩いて行って、野草の葉っぱまでよじ登っていきます。
 今度は僕たちのごはんの時間だと言って、ムシャムシャと葉っぱを食べ始めます。
 遠くで遊んでいたアリたちがそれに気が付いて、またやってきました。
 アブラムシは、玉になった自分の甘いおしっこの汁をアリたちに見せてあげます。
 美味しそうな甘い露。
 アリたちは葉っぱの上に集まって、アフタヌーンティを楽しみ始めます。
 空が夕日に染まる頃、お夕食を食べようとテントウムシがやってきますが、アリたちがいるので、アブラムシをごはんに出来ません。
 アリの手のひら返しもすごいけれど、それをものともしないアブラムシはもっとすごいなぁ、とモモタは思いました。
 ですが、モモタは無農薬菜園を見て思います。
 「でも、1番凄いのは、全部食べられてなにもなくなっちゃったのに、もとに戻った野菜たちだね」
 大根、レタスにほうれん草、小松菜、トマトにピーマンに、青梗菜。みんな青々と茂っていました。
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