270 / 505
消極的な熊たちの話
食べる側が、食べられないとは限らない
しおりを挟む
鳥たちのさえずりが木霊します。
風のそよぐ音、葉が擦れる音、そして川のせせらぎしか聞こえません。
樹海と言うところは、とても不思議な世界でした。
太く大きな木々は、まるで今にも歩き出しそうな姿をしています。
雨が降ると、小さな川になって流れていくので、木の根元の土をさらって行ってしまうのです。
ですから、根っこがむき出しになって、あたかもタコの足がうねっているように見えるのでした。
最近、モモタには楽しみが出来ました。
お気に入りのふかふか苔お布団に寝っころがって、大きなマスに思いをはせるのです。
樹海の川には、流れが緩やかになる深みがありました。
そこには、ヌシが住んでいます。
モモタより大きなマスですから、もし捕まえることが出来たなら、モモタはお腹満腹いい気分になれるでしょう。
時々、熊がごはんを探しにやってきますが、大きなマスには目もくれません。
その度に、モモタは木に登って様子を伺いますが、どの熊も、お魚のしっぽが見えているのに知らんぷりです。
モモタは、猫魚になって、捕まえられたら、と想像します。
ある時、3頭の小熊を連れたママ熊がやってきました。
ママ熊は、マスに気が付くや否や、マスに気付かれないように川辺から岩の上に登って行きます。
モモタは、考えたなぁ、と思いました。
そこから岩の下に爪をいれれば、魚が引っかかるんじゃないか、と熊が気付いたからです。
小さなモモタでは、思いもよらない発想でした。
ドボーン、と大きな水しぶきが上がります。
ママ熊は川の中に落ちましたが、右の前足の爪には、モモタよりも大きいマスが引っ掛かっています。
子供たちは大喜び。
頑張ったかいがあったというものです。
ママ熊は、3頭の小熊に、おやつを食べさせることが出来ました。
大きな音を聞きつけて戻ってきた熊たちは、その光景を見て口々に言いました。
「どうやってとったんだ?」
「信じられないわ」
不思議がるみんなに、捕るところを目撃していた熊が教えてあげました。
するとみんなは言いました。
「そんなやり方なら、捕れて当然だよ」
「ホントホント、誰でもできることをして自慢されてもね」
「気が付いていたら、私だって出来ましたよ」
せっかく頑張って大きなお魚を捕ったのに、あんな風に言われて、モモタはママ熊が可愛そうになりました。
すると、モモタの気持ちを察したのか、後ろから声をかけてきたお友達がいました。
「結果だけ見て言うなよな。
誰もやろうとしなかったし、思いつきもしなかったくせに」
モモタが見やると斜め上に熊がいて、ビックリ仰天。青天の霹靂です。
「きゃ~!助けて~!!」
モモタは、一目散に逃げていきました。
モモタは、たくさん熊がいるこの森に、なぜ遊びに来られていたのでしょうか。
それは、お気に入りの木があって、その木の細い枝に登れば、熊が近寄ってこられないことを分かっていたからでした。
ですが、1頭のクマは考えました。
木の幹の上の方はまがっているのだから、モモタより上に登って下に手を伸ばせば、届くかもしれないぞ、と。
後になって、その熊は思いました。
“あ、あの猫がいた枝を根元から折ってやれば、下から捕まえられたかもしれないな”と。
風のそよぐ音、葉が擦れる音、そして川のせせらぎしか聞こえません。
樹海と言うところは、とても不思議な世界でした。
太く大きな木々は、まるで今にも歩き出しそうな姿をしています。
雨が降ると、小さな川になって流れていくので、木の根元の土をさらって行ってしまうのです。
ですから、根っこがむき出しになって、あたかもタコの足がうねっているように見えるのでした。
最近、モモタには楽しみが出来ました。
お気に入りのふかふか苔お布団に寝っころがって、大きなマスに思いをはせるのです。
樹海の川には、流れが緩やかになる深みがありました。
そこには、ヌシが住んでいます。
モモタより大きなマスですから、もし捕まえることが出来たなら、モモタはお腹満腹いい気分になれるでしょう。
時々、熊がごはんを探しにやってきますが、大きなマスには目もくれません。
その度に、モモタは木に登って様子を伺いますが、どの熊も、お魚のしっぽが見えているのに知らんぷりです。
モモタは、猫魚になって、捕まえられたら、と想像します。
ある時、3頭の小熊を連れたママ熊がやってきました。
ママ熊は、マスに気が付くや否や、マスに気付かれないように川辺から岩の上に登って行きます。
モモタは、考えたなぁ、と思いました。
そこから岩の下に爪をいれれば、魚が引っかかるんじゃないか、と熊が気付いたからです。
小さなモモタでは、思いもよらない発想でした。
ドボーン、と大きな水しぶきが上がります。
ママ熊は川の中に落ちましたが、右の前足の爪には、モモタよりも大きいマスが引っ掛かっています。
子供たちは大喜び。
頑張ったかいがあったというものです。
ママ熊は、3頭の小熊に、おやつを食べさせることが出来ました。
大きな音を聞きつけて戻ってきた熊たちは、その光景を見て口々に言いました。
「どうやってとったんだ?」
「信じられないわ」
不思議がるみんなに、捕るところを目撃していた熊が教えてあげました。
するとみんなは言いました。
「そんなやり方なら、捕れて当然だよ」
「ホントホント、誰でもできることをして自慢されてもね」
「気が付いていたら、私だって出来ましたよ」
せっかく頑張って大きなお魚を捕ったのに、あんな風に言われて、モモタはママ熊が可愛そうになりました。
すると、モモタの気持ちを察したのか、後ろから声をかけてきたお友達がいました。
「結果だけ見て言うなよな。
誰もやろうとしなかったし、思いつきもしなかったくせに」
モモタが見やると斜め上に熊がいて、ビックリ仰天。青天の霹靂です。
「きゃ~!助けて~!!」
モモタは、一目散に逃げていきました。
モモタは、たくさん熊がいるこの森に、なぜ遊びに来られていたのでしょうか。
それは、お気に入りの木があって、その木の細い枝に登れば、熊が近寄ってこられないことを分かっていたからでした。
ですが、1頭のクマは考えました。
木の幹の上の方はまがっているのだから、モモタより上に登って下に手を伸ばせば、届くかもしれないぞ、と。
後になって、その熊は思いました。
“あ、あの猫がいた枝を根元から折ってやれば、下から捕まえられたかもしれないな”と。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/

【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる