猫のモモタ

緒方宗谷

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動物園のお友達

見下せば自信になる

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 動物園には大きな丘がありました。その丘には、幾つかのすり鉢状のお庭があって、サルたちが遊んでいます。
 モモタは、ついこの間チンパンジーのお庭に落ちるまで気が付かなかったのですが、この丘は、丘の形をした建物でした。実は、小さな動物のパビリオンだったのです。
 モモタは、こっそりと回転ドアから中に入って、新しいお友だちに出会いに行きました。
 パビリオンの中は、右も左もお友達のお家がいっぱいです。動物たちの共同住宅になっていました。
 まずは誰とお友達になろうかなぁ、とモモタが歩いていると、ウホウホ、チンパンジーのルッカが手招きします。
 「モモタ、モモタ、こっちへおいで、遊ぼうぜ」
 「嫌だよ、だって僕の事食べるもの」
 「大丈夫、食べやしないさ。だって食べたりなんかしたら、女の子達に怒られちゃうからな」
 チンパンジーたちには、チンパンジーのお友だちしかいません。モモタみたいな小さな動物は、パビリオンにはいっぱいいますが、お部屋が別々なので出会えないのです。
 モモタくらいの可愛い子供は、自分達の子供が小さかった時しか可愛がれません。ですから、モモタはチンパンジーのお姉ちゃんたちにとても人気が出ていたのです。
 モモタは、ルッカを信じてオリの中に入りました。ルッカはモモタを抱えて、お気に入りの切り株に寄りかかって、人間たちを指さして言いました。
 「ほらあの子供、とても楽しそうにしているけれど、実はつまんないんじゃないかな? 
  お母さんが甘ったれで、子離れできていないから、動物園に連れてきたんだ。
  子供は、とうに親離れしているのに、気が付いていないんだ」
 今度は別の親子を指さして、笑います。
 「頭の良いふりして、色々僕たちのことを子供に教えてあげているけれど、間違っているね。
  僕たちが人間に似ているだって? 似ていないね。似ているのは人間の方さ」
 ルッカは、そう言い終わると「懲らしめてやろうぜ」と言って、モモタを膝から下ろしました。
 モモタは、心配になって訊いてみます。
 「なにするの?」
 「なぁに、なんでもないさ」
 そう言ったルッカは、「うほっほ」と笑いながら、プリプリプリっとウンチをすると、お尻に添えた右手で受け取って、ピュイッとピンクのお洋服を着たおばさまに投げつけます。
 「やった、命中だ! 命中だ!」
 おばさまは、大絶叫。ルッカは手を叩いて、大喜びです。
 「ほら、モモタもやってみろよ」
 「僕は無理だよ、4本足だもの」
 特別したいと思わなかったので、簡単に断れる口実があって、モモタはホッとしました。
 ルッカは、オリの中から、やってくる人間を観察しながら、モモタに彼らの性格を面白おかしく教えてあげます。
 そして、ときどき気にくわない人間にうんこを投げて、ほくそ笑んでいます。
 オリの中から外を観察するってどうなの? とモモタは思いました。
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