猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
223 / 502
ずっと犬生敵だらけ、黒犬の話

自分に見せる相手への態度

しおりを挟む
 小さな丘の裏の斜面のそばにあるボロボロの空き家に、1匹の黒犬が住んでいました。
 「グルルルル~、ワン!ワン!ワン!」
 いつもいつも吼えています。何で吼えているのか分かりません。だって1匹ぽっちで吼えているのですから。
 モモタは怖くて近づきません。前に一度この空家そばを通った時に、吠えて追い立てられたことがあったので、もう2度と近づかない、と決めました。
 ですがある日、遠くに見える空き家が視界に入った時、空き家を見るスピッツの女の子がいるを見つけました。
 丘の裏の急斜面なところには、空き家意外のお家はありません。スピッツの女の子は首輪をしていますから、野良ではないようです。
 飼い犬なのに誰ともいません。モモタは不思議に思いました。女の子の首輪にはお家用のリードがついていたからです。
 モモタが行って見てみると、リードの先には杭がついていました。無理やり地面から抜いて、ここまで来たようです。
 女の子は、いろいろ迷った素振りを見せていったり来たりしてから、意を決したように背筋を伸ばして、怖そうな黒犬のところに行きました。
 「ねえ、ひびき君、わたしの話を聞いて」
 「うるせー!近寄るな」
 黒犬のひびき君は、せっかく話しかけてくれた女の子を怒鳴りつけ、グルルルル、と唸ったり吠え猛りながら、自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回っています。
 「あのね、あなたが追いかけてるの、意地悪な何かじゃないのよ、あなたのシッポなのよ」
 「嘘つくな!俺のシッポが、俺のお股をパタパタ叩くわけねーだろ」
 怒ったひびき君は、鋭い牙を見せて女の子を追い回します。
 女の子に追いつけなくて1匹で戻ってきた黒犬に、木の上で見ていたモモタが言いました。
 「ねえ、せっかく可愛い女の子が教えてくれたのに、いじめるなんてひどいよ」
 「何だ!お前も言うか!俺の事をバカにしやがって!」
 そう言い終わるや否や、黒犬は走ってモモタのいる木の下まで来て吠えました。
 「ひびき君は、そんなだから1匹ぽっちなんだよ。
  吠えるのやめてよ、やめたら絶対あの子お友達になってくれるよ」
 逃げる間がなくて、木から下りられなかったモモタは、恐る恐る真下で吼えるひびき君に言いました。
 ですが、言えばいうほどひびき君は激しくまくし吠えます。
 木を下りたら食べられちゃいそうなので、ひびき君があきらめて空家に帰るまで、モモタは木の上で縮こまっていることにしました。
 「やっぱり話しかけなければ良かったなぁ」
 結局夜まで木の上で震えていたモモタでした。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

釣りガールレッドブルマ(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!

処理中です...