猫のモモタ

緒方宗谷

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海辺のお友達

破ることも大事なこと

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 岩場で面白い生き物がたくさんいるのに気が付きました。以前ヤドカリが背負ったイソギンチャクです。
 水から出ている子は丸まって硬いのに、水に浸かっている子は、ふさふさの髪の毛みたいなのをユラユラさせています。
 目も顔も手足もありません。そんなお友達とお話するのは初めてなので、モモタはずっと眺めていました。
 「あーあ、もし私が泳げたら、あの水平線の向こうまで泳いで行くのになぁ」
 「行けば良いじゃない」
 「行けるわけないわ」
 「そんなことないよ、サメさんの話だと、海の底は砂浜らしいよ、歩いていけるよ」
 イソギンチャクは、モモタの言うことを聞き流してそっぽを向いて言いました。
 「あーあ、もし私に足があったら、しょっぱくない水を飲みに川まで行ってみるのになぁ」
 「行けば良いじゃない。
  海は川と繋がっているから、水から出なくてもいけるんだよ」
 イソギンチャクは、モモタに言い返しました。
 「いい加減な事ばかり言わないでよ!私には手も足もないし、岩にくっついているから、ここから動けないの。
  良いわね、猫さんは!だって自由にどこにだって行けるんだから」
 「そんなことないよ、僕も君と変わらないよ。
  だって、水の中には入れないし、お空だって飛べないもん」
 「でも、むこうの山には行けるでしょ?」
 イソギンチャクは、ずっと文句を言い続けています。それを理由に、なんて自分は不幸なんだと言います。そこでモモタは言いました。
 「それは違うと思うよ、岩にくっついてて離れないってことを理由にして、動こうとしないんだ。
  だって、岩からヤドカリのお家に引っ越すところを見た事あるもん」
 「そうできるイソギンチャクがいるからって、みんなが出来るとは限らないわ。
  私は出来ないイソギンチャクなの、そう言う私なの。
  どうして同情してくれないの?ひどいわ、そういうこと言って私を傷つけるなんて」
 夢を叶えてあげようとアドバイスしてあげたのに、モモタは怒られてしまいました。
 何を言っても出来ない出来ないとしか言いません。結局何もする気は無いようです。
 モモタは教えてあげました。
 「君はもう水平線の向こうまで行っているよ。
  だって、むこうの水平線から見たら、こっちも水平線の向こうだもの」
 イソギンチャクは理解してくれませんでした。



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