猫のモモタ

緒方宗谷

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牧場で出会ったお友達

言ってほしいことのその先は

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 毎日毎日、羊のなっちは、地平線まで牧草で覆われた大地を見ていました。
 遠くの葉っぱはとても美味しそうです。ですから、もっと広い範囲の葉っぱの整えたいと思っていました。
しかし、今が限界です。周りは別の羊のグループいますし、その向こうにはヤギや馬が駆けていて、葉っぱは整っていたからです。
 「ねえ、みんな、こんなことで良いのかなぁ。
  私たちたくさんいるし、とても綺麗に葉っぱと整えられるのに、こんな狭いところで満足していいのかなぁ」
 「満足はしてないさ。
  もともと、ここには牛と羊しかいなかったんだ。
  初めは、地平線の彼方まで、僕たちが草を整えてたんだから」
 多くの羊は知らんぷりでしたが、一部の羊は、真剣になっちの話を聞きました。
 「きっと、ご飯をなまけながら食べてるからよ。
  動かずに同じ場所でばかり食べてるから、ヤギに取られたのよ。
  それに、朝起きてから、ボケッとし過ぎよ、シャンとして働かないと。
  あと、みんなバラバラな食べてるでしょ?それだと、整っているところをまた整えしゃうから、効率悪すぎだわ」
 なっちは、そう言って新しいルールを決めていきます。共感した羊と共に巡回して、みんなに訴えかけました。
 とても速く広く牧草を整えていたので、なっちちゃんのやっていることは正しいとみんな思いました。成果が出るのも楽しいです。
 その内、なっちたちは、別の羊のグループにも声をかけて、一緒に葉っぱを整えよう、と呼びかけました。なっちたちの整えた葉っぱはとても綺麗だったので、すぐに多くの羊が仲間に加わりました。
 中には、言うことをきかない羊がいましたが、なっちたちはイジワルしました。
 なっちたちの目が届かない羊に対しては、別の羊たちがイジワルをして、それを自慢します。中には、なっちたちに告げ口する羊も出てきました。
 ついには半分以上の羊がなっちたちにイヤイヤ従いましたが、イヤイヤ従った羊も、従った後は率先して、従わない羊をイジワルしました。
 なっちは言いました。
 「私たちは、ヤギや馬よりもうまく葉っぱを整えられるのよ。
  だから、いま整えている広さでは足りないわ。
  みんなで、ヤギのところに行って、葉っぱを整えてあげましょう。
  だって、私たちがいれば、ヤギたちは必要ないからね」
 みんなは、そうだそうだ、と声をあげました。
 モモタは、なっちに言いました。
 「そんなこと、するなんてよくないよ。
  ヤギだって、牧場のお友達じゃない」
 なっちは言いました。
 「私たちとは違うもの。
  葉っぱを食べる動物は、綺麗に早く広く食べられる羊だけで十分よ。
  それに、ヤギは暖かい毛も生えていないのよ」
 「ヤギは美味しいミルクが出るじゃない。
  僕には色々なお友達がいるけど、みんなそれぞれ得意なことが違うんだ。
  みんなが違う特技を持っているから、とても楽しいんだよ」
 結局なっちは聞きませんでした。
 ヤギや馬たちの迷惑を知った牧場主は、いろいろ手を打ちましたが、一向にやめません。結局、なっちが原因だったと牧場主が気が付くまで、ヤギへのイジメは続きました。
 仕方がないので、牧場主は、なっちを叱りました。すると、それを見た羊たちが言いました。
 「私たち、イヤイヤだったのよ。
  なっちがやれって言うから、仕方なくやっていたのよ」
 「そうだよ、僕たちは何も悪くない。
  そうしなければ、僕たちがイジメられてしまうもんね」
 モモタには、みんなが率先してやっていた様に見えていたので、なっちに責任を押し付けているように見えてなりません。
 普段1匹で過ごすモモタには、とても怖い光景に映りました。 


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