猫のモモタ

緒方宗谷

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仲睦まじいブレーリーハタネズミの話

たくさんいても、いないと一緒

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 「おーい、おいおいおい、おーい、おいおいおい、」
 遠くから泣き声が聞こえてくるので、モモタは急いで泣いているお友達を探しに行きました。
 「ハタネズミさん、どうしたの?何が悲しくて、そんなに泣いてるの?」
 「おーい、おいおいおいお、妻が、妻が死んでしまったんだよ」
 まだ奥さんの匂いのある寝床に顔を埋めて、大粒の涙を流しながら叫びました。
 どう声をかけていいか分からないモモタは、見ているしかありません。
 すると、元気のないハタネズミを見かねて、飼育員さんが別の巣にいた1匹のメスを連れてきてくれました。
 「さあ、ハタスケ、新しいお嫁さんだよ」
 飼育員さんは、そう言ってメスのハタネズミを巣に入れます。
 メスのハタネズミは喜びました。
 「わぁ、素敵なお家ね、あなたも素敵だわ、わたしたち仲良くしましょうね」
 とても可愛い女の子です。ハタスケに気がある様子で近づいてきました。
 ですが、ハタスケはすごいしかめっ面です。
 「わっ、何なんだ、お前は!こんにゃろ、こんにゃこ!」
 「きゃぁ」
 なんと、せっかく来てくれた女の子を鼻でつついて追い立てます。モモタは、びっくりして言いました。
 「ハタスケ君をなぐさめに来てくれたんだよ、やめてあげて。
  今はこの子と一緒にいて、辛いのを癒そうよ」
 「やなこった。
  僕には…僕には…あの子しかいないんだ!あっちへ行けよ、ここは僕たちの愛の巣なんだ」
 ハタスケは、一向に仲良くしようとしません。暴れて走り回るので、飼育員さんは、慌ててメスを取り出します。
 「あんなに優しかった旦那さんなのに、こんなに変わるなんて信じられない」
 ある夜、モモタがオスを見に行くと、まだシクシク泣いています。
 「どうしたの?」
 「死んだ妻が忘れられないんだ。
  目をつむると、温もりさえも感じるくらいなんだよ。
  とてもじゃないけれど、死んだなんて信じられない。
  今も隣に寄りそっていてくれるんじゃないかと思えるほどなんだ。
  でも、辺りを見渡しても妻はいない。
  寝床から出ると、冷たい空気が毛皮の中に伝わって、ああ、僕は1人なんだなって思い出す。
  会いたい、妻に会いたいよぉ」
 気持ちを抑えきれなくなったオスは、ワンワン泣き始めます。
 モモタは思いました。
 「愛するって偉大なんだ。
  残された大好き好き好きな子にとっては、死んでもまだ生きてるんだもの」
 一途に愛し合うことをとても素晴らしいことですね。





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