猫のモモタ

緒方宗谷

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一心不乱のハツカネズミの話

大好きなことをしていられるって素晴らしい 

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 ゲージの中のハツカパパは、相変わらずぐるぐるハシゴで遊んでいました。
 それを見ていたモモタは、ハツカママに言いました。
 「いつまでも治らないね、これじゃあ体を壊しちゃうよ。
 「あら、大丈夫よ。
  ご主人様が心配してくれて、新しいおもちゃをくれたの」
 ハツカママの指さす方を見ると、ぐるぐるハシゴの上にスポイトが付いていました。
 ハツカパパがしばらく回るとスポイトが下りてきて、一滴のジュースを垂らします。
 「あはは、面白いね、でも、子供のお世話をせずに飲んで遊んでの繰り返しなんて、パパ失格だね」
 「うふふ、あれお仕事なのよ。
  3滴に1滴は舐められずにこぼしてしまうの」
 みんなで見ていると、ジュースが一滴、下の器に落ちました。
 「わーい!わーい!」
 子供たちが飛んでいきます。モモタは、その光景を見て言いました。
 「ハツカパパは、大人になると忘れていくものをまだ忘れていないんだね。
  色々なお友達と遊んできて、人生って忘れる事だって思ったんだ。
  そうやって残った物の中に光る幸せを大切にして生きているお友達が多いんだけど、でもね、忘れないでいるお友達の方が幸せそうなんだ。
  どちらが正しくて、どちらが間違っているとか分からないけど、ハツカママの家族は幸せそうで何よりだね」
 子供たちの毛づくろいをしながら、ハツカママは愛おしそうにパパと子供たちを見て、うなずきます。
 しばらくして、パパが戻ってきました。
 「はあはあ、今帰ったぞ」
 「お帰りなさい、あなた」
 「どうだ、今日のぐるぐるぶりは?」
 「とても素敵だったわよ」
 疲れ切っているようですが、とてもさわやかな笑顔のハツカパパ。ママはゴロンとしたパパの毛づくろいを始めました。
 「ハツカママのいたわりがあるから、パパは一生懸命遊べるんだね」
 そう言うモモタに、ハツカママが言いました。
 「夫元気で外が良いって言うじゃない?」
 「あはははは、パパがお座布団に見えてきた」
 夫婦円満の秘訣を見たモモタでした。




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