猫のモモタ

緒方宗谷

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いつでもどこでも平常心のタヌキの話

あなたのためよは嘘だらけ

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 モモタは、川の小さなお魚を捕まえようと、構えてお尻を振りふししていました。
 ですが、水に入るところを想像すると、おっかなびっくり、腰が引けてしまいます。どうしても躊躇して、肉球を出せません。
 「捕まえられそうだったけど、水にぬれるのはやだなぁ」
 「ヤな気持ちは、なかった事に出来ますよ」
 振り向くと、いつの間にかおかしなタヌキさんがいました。
 「どうやってなかったことに出来るの?だって、冷たい水には浸かっちゃってるんだよ」
 「こんど、村でお肉をもらっておいでなさい。
  ドブンとして嫌な気持ちになったら、急いで出てきて、お肉を食べれば良いでしょう」
 「どうして、それでいやな気持ちをなしに出来るの?」
 「お肉を食べると幸せな気持ちになれるでしょ?ヤな気持ちを埋め合わせするんです。
  幸せな気持ちは無くなりますけど、嫌な気持ちも無くなりますよ」
 「そうだけど、何もないなら、初めからしなくても良いんじゃない?」
 「おバカさんですねー、お魚が残るじゃあーりませんか」
 そうかと気が付いた瞬間、モモタは頭のモヤモヤが晴れた気分です。
 次の日、タヌキに言われたとおりに、お肉をもらって同じ小川にやってきました。
 「お、さっそく来ましたね、モモタ君。
  では早速、あそこの流れがよどんでいるところに、お魚がいますから、やってごらんなさい」
 「よーし」
 モモタは、お尻をフリフリ真剣に構えて、魚めがけてピョイッと飛びかかりました。
 ジャボ―――ン!!
 「ひゃー!冷たーい!」
 モモタはぶるぶる震えながら、小魚を1匹くわえて岸に上がって来るなり、タヌキを見て叫びました。
 「あれ?タヌキさん、なんで僕のお肉食べちゃったの!?
  ひどいよ、僕のこのヤな気持ちは、どうすればいいのさ!!」
 「安心しなさい、ほら、そこ」
 タヌキが鼻を指す方を見ると、小さなお肉のかけらが落ちています。
 「たったこれだけ?」
 たった1口のお肉では、とてもじゃないけれど、ヤな気持ちをなかった事に出来ません。
 「それでもお魚があるでしょう?それを食べれば、きっと満足できますよ。
  なぜならば、君が君自身の力で取ったお魚なのですからね」
 確かにその通りです。こんなに美味しいお魚は初めてです。クリのように甘みがあって、海のお魚とは違う美味しさで。
 「お肉は勉強料ですよ。
  私は、君のためにしたのですよ」
 「う――ん・・・」
 どうも、騙されているような気がするモモタでした。



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