猫のモモタ

緒方宗谷

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山の上のお友達

幸せってどうしたらなれるの?

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 山道をお散歩していたモモタは、日当たりのいい、ふっくらとした土の上で、新しいお友達と出会いました。
 「あ、小さなヘビさん、こんにちは」
 「?僕はヘビじゃないよ、ミミズだよ」
 「ミミズ?ミミズってなーに?」
 土の上でピチピチしていたミミズを初めて見るモモタは、興味津々です。
 「お空を飛ぶ練習をしてるんでしょう?ミミズさんはどんな虫になるの?」
 「?僕はお空を飛ぶ虫に何かからないよ。
  僕は、温かくて柔らかい土の中で、ゴロゴロしてるのが好きなんだ」
 「どうして?そんなにピチピチする元気があるのに、お空を飛ぶ虫にならないなんてもったいないよ」
 どうやらモモタは、青虫や毛虫の仲間と勘違いをしている様です。
 「僕はずっとこのままだよ、生まれた時から大人になっても変わらないんだ」
 「努力しようよ、そうすれば蝶々や蛾みたいにお空が飛べるよ。
  そうしたら、とても幸せだろうな。
  虫に生まれたんだから、お空を飛ぼうよ」
 ミミズは不思議そうです。
 「努力したら幸せ?あはははは」
 お腹をよじるミミズは、続けて言いました。
 「君は、何をしている時が一番幸せなんだい?」
 「そーだなぁ、ポカポカしたところで、お昼寝してるときかな」
 「頑張って、努力して、お昼寝してるの?」
 「まっさかー」
 笑うモモタに、ミミズは言います。
 「努力した先に幸せがある事もあるんだろうけど、本当に幸せなのは、何もしない時間がある事だよ。
  だってそうだろう?何もしないでいい時間があるなんて、素晴らしいじゃないか。
  みんな、1日中ご飯を探すのに大忙しなんだからね」
 確かにそうです。モモタは、村のお家のお世話になっているので、ご飯を探さなくて済んでいますが、山のみんなは1日中ご飯を探しているのですから。
 「ふーん、ご飯が貰えるなんて、羨ましいな。
  でも、これで分かっただろう?
  君には何にもしなくて良い時間がたくさんあるから、山の中までお散歩しに来れるんだよ」
 家猫には分からない自然の厳しさと、努力しない中にも大切なものがある、と思える出会いでした。






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