猫のモモタ

緒方宗谷

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しつこいハエの話

押し付けるのは良くないよ。

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 山の中へ遊びに行ったときのモモタは、いつも決まった場所でウンチをします。でも昨日と今日の朝は、違う場所でウンチをしました。
 すっきりしたモモタが、小さなトカゲを追いかけて遊んでいると、ハエがやって来て言いました。
 「なぜ君は、いつもの場所でウンチをしないんだ」
 びっくりするモモタに、ハエは続けて言いました。
 「いつも、向こうの樫の木の根元にウンチをする猫は、君のことだろう?」
 「そうだけど、それが何?」
 「昨日も今日は、ウンチをしなかったじゃないか」
 「うん、昨日と今日は違う場所でしたんだ」
 ハエは怒って言います。
 「そのせいで、昨日も今日も僕は朝ご飯を食べ損ねたんだぞ!責任とってくれよ」
 「えぇ?何でそんなこと。
  僕は、君と何も約束してないし、そもそも君のためにウンチしてるんじゃないよ」
 それを聞いたハエは、さらに怒ります。
 「なんてひどいことを言うんだ!!責任とってくれよ!!
  信頼関係を壊しなのは君なんだから、君は誠意を見せるべきだ」
 困ったモモタは、その場から逃げだしましたが、しつこいハエは、モモタのお尻の周りをブンブン飛び回ってついてきます。
 「どうして、そんなについて来るのさ」
 モモタの問いに、ハエは顔を真っ赤にして叫びました。
 「僕のことが分からないのか?こんなヒドイことってあるか!!よーし分かった、君が思い出すまで、嫌がらせしてやるんだから!!」
 モモタは、さんざん考えて、ようやくこのハエのことを思い出しました。
 山に遊びに来て間もないある日、樫の木の根元でウンチをしていたモモタに、木の幹にとまって話しかけてきたハエでした。
 「できたてホヤホヤのウンチ、猫君、もしよかったら僕にちょうだいよ」
 「良いよ、好きなだけあげるよ」
 ただそれだけの会話です。それから今日まで1度も会っていませんでした。
 「ようやく思い出したか、どれだけ君が悪い子か分かっただろう?」
 「えぇ!?何で悪い子になるの?」
 ハエの中でどんな話が出来上がってそんな物語になったのか、モモタは不思議でなりません。
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