猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
66 / 500
命を懸けるネズミの話

自分と同じくらい大切に思えたら

しおりを挟む
 最近、いつも追いかけっこをして遊ぶネズミに会えていなかったモモタは、とても心配になって探していました。
 「ネズミさん!どうしたの?怪我してるじゃない!!」
 ようやく見つけたネズミは、怪我をしていてヘロヘロです。
 モモタのそばまでたどり着けずに倒れたネズミに駆け寄って、縁側まで連れて行ってあげました。
 とても大きな怪我だったので、モモタは看病してあげることにしたのです。
 「僕はもうだめだ」
 「そんなことないよ、がんばってよ」
 弱音を吐くネズミを何とか勇気づけようとしますが、力なくふせっていて、元気を取り戻しません。
 「モモタ、僕の事食べてくれないか」
 「え?何で僕が?お友達を食べるなんてできないよ」
 「僕は、このまま死んで朽ちてしまうのが嫌なんだよ。
  僕たちは何かを食べなければ生きていけない、それは君も分かるだろう?
  生まれた時はとても小さいのに、大人になると、すごく大きくなる。
  という事は、僕たちの体は、食べたものでできてるんだよ。
  僕は君になって、一緒に虹を見に行きたいんだよ。
  僕を置いてかないでおくれよ」
 ネズミは泣きながら、モモタに懇願します。
 「どうか、お願いを聞いておくれ。
  僕は、他のどの猫にも食べられたくないし、土になりたくもないんだよ。
  君と一緒に生きて生きたんだ」
 モモタは断りました。
 「もし僕が食べても良いよって言ったら、ネズミさんは安心して、死んでしまうでしょう?なら僕は食べないよ、だって僕は生きてほしいもの。
  だから一生懸命元気になってよ」
 周りにはネズミを狙う猫たちの殺気がありました。
 ですから、モモタはネズミさんに寄りそって、何日も一緒にいました。
 怪我が癒え始めたある日、ネズミが言いました。
 「なんだよ、僕死にそびれたよ。
  せっかく感動的な死に方だったのに」
 「僕は、生きてて良かったって思うよ、また追いかけっこしようね」
 「そうだな、甦った僕は速いぞ、きっと捕まらないぞ」
 「僕だってもっと速くなるよ」
 「もし僕を捕まえたら、今度は本当に食べておくれよ」
 「良いよ、黒くて苦い粒も残さず食べてあげるよ」
 モモタにはたくさんのお友達がいますが、命がけの約束をしたお友達は初めてでした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

王太子さま、側室さまがご懐妊です

家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。 愛する彼女を妃としたい王太子。 本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。 そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。 あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

夫から国外追放を言い渡されました

杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。 どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。 抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。 そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

処理中です...