猫のモモタ

緒方宗谷

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田舎で出会ったお友達

優しいのには理由があるから

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 辺り一面、薄緑色の葉っぱに覆われています。夏真っ盛り、田んぼは豊かな水で満たされ、穂の上をたくさんの虫が飛んでいます。
 稲の茂りの中をカモの家族が悠々泳いでいました。田んぼの中に生える雑草を食べるお仕事を人に任されて、一生懸命働いていました。
 それを見ていたモモタが言いました。
 「大変だね、カモさん」
 「そうだね、でも楽しいよ。
  お仕事と、宝探しと、生きる事が一緒だからね」
 「遊びがお仕事になるって、素晴らしいよね。
  僕もネズミを捕るお仕事をお婆ちゃんに任される事あるけど、鬼ごっこみたいでとても楽しいんだ」
 お父さんカモの所にやってきた子ガモたちも、口をそろえて言います。
 「ほっかむりのお婆ちゃんはとても優しいから、僕たち大好きだよ。
  こんなに広いお庭で遊ばせてくれるし、ご飯もくれるし、夕方には褒めてくれるんだよ。 
  お仕事が終わると呼んでくれるから、一緒にお家に帰るんだ。
  お家にいれば、安心して眠れるし、僕たちはとても幸せなカモ一家だよ」
 「ホントホント、野生のカモにも自慢するんだ」
 それを聞いて、モモタが言います。
 「人間を信じないお友達は結構いるよね、でもそれってすごくもったいないなーて思うんだ。
  目の前にご飯と猫じゃらしががあるのに、拾わずに捨てちゃうみたいな感じー」
 カモの一家は笑ってくれました。
 秋が来ました。実った稲穂は黄金色になって、頭を垂れています。
 「さあ、もうすぐお仕事も大詰めだよ。
  お米が刈り取られるまで、もうひと頑張りだ」
 「エイエイ!おー!!」
 カモの一家は、雑草を食べるのに大忙しです。
 でも秋が深まったある日、田んぼの水が抜かれてしまいました。泳げなくなったカモたちは、どうしたら良いか分かりません。
 土も乾燥して、雑草が生える余地はありません。
 「さあ、おいでカモたち、お家に帰るよ」
 そうご主人様に呼びかけられたカモたちは、お家に帰って行きました。
 次の日、カモたちは出てきませんでした。その次の日もその次の日も、カモの一家はお家から出てきません。ご主人様に食べられてしまったのです。
 モモタは、前に出会った人を信じないハトがいたことを思い出しました。

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