猫のモモタ

緒方宗谷

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一緒に暮らすの大得意イタチの話

満足するのは自分だけ

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 3つのイタチのお家を遠くから見ている女の子がいました。
 「どうしたの?1匹ぽっちで」
 「うん、お兄たんたちどうしてるかなぁって思って」
 「お兄ちゃんたち?」
 訊くと、ギーちゃん達は4兄弟ではなく、5匹兄妹だったのです。末っ子は、モモタが山に遊びに来るずっと前に、追い出されていたのでした。
 「どうして追い出されたの?」
 「お兄ちゃんたちは舞茸が好きなのよ。
  でも、私は椎茸が好きなの。
  だって、とても味が濃くて、美味しいもの。
  それに、傘が開く前の椎茸は、とても可愛いの。
  他の茸じゃ、とてもじゃないけれど、あんなに可愛い形にならないわ」
 それが追い出された理由になるとは思えません。
 「『同じきのこが好きじゃないなら、兄妹じゃない』って言うのよ。
  ギー兄ちゃんが『懲らしめてやる』って、かじってくるのよ」
 「他のみんなは助けてくれなかったの?」
 「お仕置きだから仕方がないって」
 「僕はきのこは食べないけれど、アジもおいしいし、サンマもおいしいし、タイも美味しいよ。
  どれか1つを選べなんて言われても、選べないな」
 モモタの考えに、1匹ぽっちのユキちゃんは言いました。
 「そうよね、好きなようにするのが一番よ」
 「1匹はさびしくないの?」
 「寂しくないわ、逆に楽しいくらいよ。
  だって、何だって自分で決められるんですもの」
 そう言うユキちゃんの目は、少し悲しげでしたが、キリっとした口調です。
 「僕たちお友達になろうよ。
  そうだ、今日ユキちゃんちにお泊りして良い?」
 すぐに断って、ユキちゃんは言いました。
 「必要があればそうするけど、今はいいわ。 
  だって、私にはあなたに用事が無いもの」
 「でも、1人じゃ寂しいでしょ?だから、お兄ちゃんたちを見に来たんでしょ?僕が一緒にいてあげるよ」
 やっぱりユキちゃんは断ります。
 「一緒にいてあげたいっていうあなたの気持ちのために、私と一緒にいたいんでしょ?」
 「違うよ、ユキちゃんが寂しいと思ったから・・・」
 「どのユキちゃんが思ったの?」
 「それは・・・」
 モモタは答えられません。ユキちゃん本人が寂しくない、と言っているのに、ユキちゃんが寂しがっていると言うのも、おかしな話です。
 「あなたの中のユキたんは私じゃないわ、あなた自身よ」
 「僕がユキちゃん?ユキちゃんが僕?」
 頭がこんがらがるモモタでした。

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