猫のモモタ

緒方宗谷

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全家福を夢見るオオカマキリの話

自分の幸せと孫の幸せどっちが大事?

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 空き地の葉っぱの上で、大きなカマキリのカップルが、イチャイチャしていました。
 「カマ男さん、愛しているわ」
 「僕もだよ、カマ実ちゃん」
 とても仲が良さそうですが、すぐにカマ男さんがどこかに行こうとします。
 「どこに行くの?私、あなたをムシャムシャしたいほど愛しているのよ」
 「僕も同じだよ、僕もムシャムシャされたいほど、君を愛しているよ」
 「じゃあ行かないで、私にムシャムシャされてちょうだい」
 カマ実ちゃんはお願いしますが、カマ男さんは行ってしまいました。
 あまりにしょげているので、カマ実ちゃんが可愛そうになったモモタは、慰めてあげました。
 「カマ実ちゃんは綺麗だから、カマ男さんもすぐに戻って来るよ」
 「ありがとう、でも、ダメなの。
  あの人、違うカマキリちゃんのところに行ったんだわ、きっと」  
 モモタが塀の上から、空き地の中央を見やると、カマ男君は、違うカマキリちゃんとイチャイチャしています。
 「もっと良いカマキリさんに出会えるよ」
 カマ男くんを見たことを黙ったまま、モモタはそう言いました。
 「はぁ、私って、いつもあんなカマキリを好きになっちゃうの。
  ムシャムシャしたいのに、ムシャムシャさせてくれないカマキリに魅かれちゃうのよね。
  ムシャムシャさせてくれる一途なカマキリの方が良いのは分かるけれど、でも違うのよね」
 モモタは、訊きました。
 「そこまで分かっているなら、あえてムシャムシャカマキリを選んだら?」
 「私、赤ちゃんにはモテモテカマキリになってほしいの。
  たくさん孫の顔が見たいし、ひ孫もみたいわ。
  だから、カマ男さんみたいな、モテモテカマキリにお父さんになってほしいのよ」
 モモタには分かりません。
 「好きな子には、好きでいてもらいたいな」
 「そうね、私もそう思うわ。
  でも、私にムシャムシャされてしまうオスの子は、私みたいなのにムシャムシャされてしまうわ。
  そうしたら、たくさんイチャイチャ出来ないでしょう?私の孫の数が減っちゃうもの」
 自分の幸せよりも、子供や孫の幸せを何よりの幸せ、と思うカマ実ちゃんでした。






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