猫のモモタ

緒方宗谷

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いつもと同じが一番の羽アリの話

名前の違う同じもの

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 ブドウ園に30種類のブドウが実っていました。
 モモタは食べないのですが、ネズミが葡萄を食べようとやって来るので、木の根元でゴロリとして、待っていました。
 ワイワイ声が聞こえてきたので見上げると、たくさんの羽アリが飛んでいます。
 「わー、いっぱい葡萄が生っているよ」
 「やったー食べほーだいだー!!」
 羽アリたちは、思い思いのブドウのみにとまって、甘い汁をチューチューします。
 それを見ていたモモタが気が付きました。
 「どうして、おなじ実ばかりチューチューしてるの?赤っぽいのや、緑色の、大きいのや小さいの、種が無いのもあるでしょう?」
 羽アリ姫が答えてくれました。
 「たくさんあり過ぎて、選べないもの。 
  それだったら、いつも食べているのが良いでしょう?」
 「どうして?初めてのお味を楽しまないの?」
 「失敗したらどうするの?それに、選ぶなんてめんどくさいわ」
 自分だったら、1つ1つ味わってみるのになと思いました。
 「そうだ、モモたんおすすめブドウは何かしら?」
 「僕、ブドウ食べないよ」
 「だから良いのよ。
  普段食べない猫ちゃんが選ぶなんて、新鮮だわ」
 そう言われたモモタは、キョロキョロと熟れているブドウを探します。
 「んーとね、じゃあまずあれ、つぎこれ、そしたらこれかな?」
 姫ちゃん一行は、モモたんツアーを楽しみます。
 「うーん、どれもおいしいわぁ」
 みんな大満足です。
 「いろいろ味わうのも良いでしょう?」
 モモタの言葉に、ホント、ホント、と言ってくれました。
 ですが、しばらくして見に行くと、やっぱりいつも食べてるブドウをチューチューしています。
 「あれれ?朝昼晩、おんなじブドウ?」
 「やっぱり、たくさんあり過ぎて、めんどうだわ。
  30種類って言ったけど、結局ブドウ1種類だもん」
 確かに、姫ちゃんの言う通りです。
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