猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
80 / 502
おせっかいな蜜蜂の話

周回遅れでも、先頭を走っているように見えることもあるよね

しおりを挟む
 「ほら、あの花の蜜は取ったの?向こうにも花が咲いているわ。 
  まだ蜜が残っていないか確認したの?この花の蜜を取るのを手伝ってくれる?
  ねえ、ちょっと、あの子のこと手伝ってくれる?」
 忙しそうに、蜜蜂があれこれ叫んでいました。
 「これどうするの?」
 「それは、かたづけ中ですよ」
 働き蜂が答えると、忙しそうな蜜蜂は、他の働き蜂に言いました。
 「何探しているの?」
 「別に何も探していませんよ」
 春が来て、沢山の花が一斉に咲いたので、この近くに巣を構えた蜜蜂は大忙しです。
 「あの子、あれやってないわ。
  あっちの子、これやってないわ。
  ああ、忙しい、忙しい」
 沢山の蜜蜂が働いていますが、成長盛りの赤ちゃんたちを満腹にさせなければならないので、やってもやってもきりがありません。
 「赤ちゃんたち、もっと食べなさい」
 「今食べてまちゅよ」
 赤ちゃんにそう言われた忙しそうな蜜蜂は、巣を作っている左官さんに言いました。
 「お家を作ってくださいな」
 忙しそうな蜜蜂は、蜜を取りながら花粉を集めて、辺りを警戒していた蜜蜂に言いました。
 「花粉を集めて」
 「この花の蜜を集めきったらね」
 忙しそうな蜜蜂は、蜜を取っていた蜂が花粉を集め出した時に、もう1度やって来て言います。
 「見回りもお願いね」
 「花粉を集めたらね」
 見回りながら、蜜と花粉を持て巣に戻る働き蜂のところに、忙しそうな蜜蜂がまたやって来て、言いました。
 「蜜を集めてよ」
 「今もっている蜜をお家にしまったらね」
 忙しそうな蜜蜂がモモタの所にやって来て、言いました。
 「ああ、本当に忙しいったらありゃしないわ。
  ヤになっちゃうわね、どうしたら良いんでしょう」
 モモタは、言いました。
 「忙しそうなのは君だけだよ。
  少しお休みしたら、もっと早くなるんじゃないかな?」
 モモタは言いませんでしたが、この忙しそうな蜂が色々言ってあげた蜂は心なしか遅くなり、そばからいなくなると、心なしか速くなっています。
 「お空を飛べるからって、遠くまで見えるわけじゃないんだね」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

壊れたオルゴール ~三つの伝説~

藍条森也
児童書・童話
※伝説に憧れただけのただの少年が、仲間と共に世界の危機に立ち向かい、世界をかえる物語。 ※第二部第一〇話開始。 ※一二月は第二週、第三週連続公開。一月は六日(月)から開始。 ※第二部一〇話あらすじ  ビーブ、トウナ、野伏、行者、プリンス、〝ブレスト〟・ザイナブ、セシリア……。  ロウワン不在のなか、仲間たちが繰り広げるそれぞれの場所でのそれぞれの戦い。 ※注) 本作はプロローグにあたる第一部からはじまり、エピローグとなる第三部へとつづき、そこから本編とも言うべき第二部がはじまります。これは、私が以前、なにかで読んだ大河物語の定義『三代続く物語を二代目の視点から描いた物語』に沿う形としたためです。  全体の主人公となるのは第一部冒頭に登場する海賊見習いの少年。この少年が第一部で千年前の戦いを目撃し、次いで、第三部で展開される千年後の決着を見届ける。それから、少年自身の物語である第二部が展開されるわけです。  つまり、読者の方としてはすべての決着を見届けた上で『どうして、そうなったのか』を知る形となります。  また、本作には見慣れない名称、表現が多く出てきます。当初は普通に『魔王』や『聖女』といった表現を使っていたのですが、書いているうちに自分なりの世界を展開したくなったためです。クトゥルフ神話のようにまったく新しい世界を構築したくなったのです。そのため、読みづらかったり、馴染みにくい部分もあるかと思います。その点は私も気にしているのですが、どうせろくに読まれていない身。だったら、逆に怖いものなしでなんでもできる! と言うわけで、この形となりました。疑問及び質問等ございましたらコメントにて尋ねていただければ可能な限りお答えします。 ※『カクヨム』、『アルファポリス』、『ノベルアップ+』にて公開。

白紙の本の物語

日野 祐希
児童書・童話
 春のある日、小学六年生の総司と葵は図書室で見つけた白紙の本に吸いこまれてしまう。  二人が目を開けると、広がっていたのは一面の銀世界。そこは、魔女の魔法で雪に閉ざされてしまった国だった。 「この国を救って、元の世界に帰る」  心を決めた総司と葵は、英雄を目指す少年・カイと共に、魔女を倒す旅に出る。  雪に隠された真実と、白紙の本につむがれる物語の結末とは。  そして、総司と葵は無事に元の世界へ帰ることができるのか。    今、冒険が幕を開く――。 ※第7回朝日学生新聞社児童文学賞最終候補作を改稿したものです。

処理中です...