猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
71 / 502
村の片隅にいたお友達

心の傷は治せないの?見えないからって放っておいちゃ、心に毒だよ

しおりを挟む
 お婆ちゃんが、パンくずを撒いています。沢山のハトがやってきました。
 「あれ?君は、ご飯を食べないの?」
 「うん、食べないよ。
  僕は、あの人を信用していないんだ」
 「なんで?良い人だよ。
  僕たちも、いつもごちそうになってるよ」
 不思議に思うモモタに、1羽のハトが言いました。
 「いつか捕まっちゃうよ。
  人間は、僕たちを捕まえるのが趣味なんだ」
 「まさか、僕、1度も捕まった事ないよ。
  それに、お空が飛べる君たちを、どうやって捕まえるっていうのさ」
 「急に暗くなるんだ。
  何かが降ってきて、飛ぼうとすると、頭がゴッツンコするんだよ」
 モモタは、空を見上げました。なにもありません。
 「意地悪する人もいるかもしれないけど、良い人も沢山いるよ。
  だって、良い人がいっぱいだから、僕、お家からここまで旅行してこれたんだもの」
 「運が良いだけさ、いつかあのお婆ちゃんにつかまってしまうさ」
 モモタは、あのお婆ちゃんが良い人だと証明しようと、ご飯をねだりに行きました。
 「あらあら、猫ちゃん、今日は裂きカツオがありますからね。
  取って来るから、待っててね」
 お婆ちゃんは、お家に入って行って、ご飯をくれました。
 「ほら、良い人じゃない、僕捕まったりしないよ」
 ハムハム食べたモモタは、木の枝にとまって見ているハトの所に戻って言いました。
 「もしもの時に備えて、僕は人を信用しない」
 ハトは、まだ言っています。よく見ると、このハトだけとても痩せていました。
 「意地悪されないために疑うのも大切かもしれないけど、良い人を良い人だって信じる事も大説だよ。
  楽しい事にはハトさんみたいに羽が生えていて、どっかに飛んでいっちゃうんだ。
  でも、大変な事には羽が無いから、背中が重くなっちゃうんだよ」
 ハトは信じません。ハトの心は、とても頑なでした。
 モモタは、このハトを傷つけまいとして言いませんでしたが、こう思っていました。
 「君は、他のハトより痩せていて、みすぼらしいよ。
  でもそれは、見た目がそうなんじゃないんだ、心がそうだから、そう見えるんだよ。
  だって、人を信用しない山のお友達は多いけど、みんな綺麗だもの。
  君は飛ぶのだって遅いし、遠くにだって飛んでいけない」
 モモタは、このハトが、何か心に傷を負っているのだと思いました。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

【シーズン2完】おしゃれに変身!って聞いてたんですけど……これってコウモリ女ですよね?

ginrin3go/〆野々青魚
児童書・童話
「どうしてこんな事になっちゃったの!?」  陰キャで地味な服ばかり着ているメカクレ中学生の月澄佳穂(つきすみかほ)。彼女は、祖母から出された無理難題「おしゃれしなさい」をなんとかするため、中身も読まずにある契約書にサインをしてしまう。  それは、鳥や動物の能力持っている者たちの鬼ごっこ『イソップ・ハント』の契約書だった!  夜毎、コウモリ女に変身し『ハント』を逃げるハメになった佳穂。そのたった一人の逃亡者・佳穂に協力する男子が現れる――  横浜の夜に繰り広げられるバトルファンタジー! 【シーズン2完了! ありがとうございます!】  シーズン1・めざまし編 シーズン2・学園編その1  更新完了しました!  それぞれ児童文庫にして1冊分くらいの分量。小学生でも2時間くらいで読み切れます。  そして、ただいまシーズン3・学園編その2 書きだめ中!  深くイソップ・ハントの世界に関わっていくことになった佳穂。これからいったいどうなるのか!?  本作はシーズン書きおろし方式を採用。全5シーズン順次書き上がり次第公開いたします。  お気に入りに登録していただくと、更新の通知が届きます。  気になる方はぜひお願いいたします。 【最後まで逃げ切る佳穂を応援してください!】  本作は、第1回きずな児童書大賞にて奨励賞を頂戴いたしましたが、書籍化にまでは届いていません。  感想、応援いただければ、佳穂は頑張って飛んでくれますし、なにより作者〆野々のはげみになります。  一言でも感想、紹介いただければうれしいです。 【新ビジュアル公開!】  新しい表紙はギルバートさんに描いていただきました。佳穂と犬上のツーショットです!

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

処理中です...