猫のモモタ

緒方宗谷

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生き急ぐ亀の話

急いでゆっくりする理由

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 久しぶりに、近所のお家の庭にタライが置いてあったので、モモタはカメとお話をしに行きました。
 「カメさん、今日は冒険に出かけないの?」
 「ああ、今日は石の上でこうら干しをしたからね」
 ググイーと首を伸ばしたカメに、モモタは言いました。
 「そうなの?まだ、お外に来たばかりじゃない?」
 水槽を洗い始めたカメの飼い主を見て、モモタは不思議に思います。石の上によじ登ったカメが言いました。
 「ほら、こうら干ししてるじゃない」
 「今からするの?もうたのかと思った」
 カメは、ググイーと首を伸ばしてパクパクしています。
 「ニコニコして、どうしたの?」
 モモタが聞くと、カメが答えました。
 「君が面白いことを言うからさ」
 「僕、何も言ってないよ」
 「あはははは、何も言っていないだって、面白いの-」
 しばらくすると、カメはモグモグし出して言いました。
 「ご主人様、今日もおいしいお昼ご飯をありがとー」
 「お昼ご飯?朝から僕とおしゃべりしてたじゃない?」
 間もなく、ご主人様が、ご飯をタライの中に入れてくれました。
 カメは、精いっぱい首を伸ばして、ご飯を食べていきます。
 「やったー、ご飯だ!食べにいこーとっ」
 「えぇ?もう食べちゃったじゃない?」
 伸ばした首の位置までこうらを引いていきます。
 「あれ?モモタ君、こんにちは」
 「なに?今気付いたみたいに言って」
 「今気が付いたんだよ」
 「朝から僕とお話してたじゃない?」
 モモタの言葉に、カメはビックリして言いました。
 「本当かい?またか、最近みんなに言われるんだ」
 「どうして?僕とおしゃべりしていた時、何を考えて他の?」
 「こうら干しとモモタ君とのおしゃべりと、ご飯を食べるとこ。
  最近、空想に浸る事が多いんだ」
 モモタは、喜んで言いました。
 「わぁ、すごい!未来の事を空想してたの?」
 「ああ、でも役に立たないよ、モモタ君とのおしゃべりも上の空だったしね」
 「そんな事ないよ。
  その空想に首が引っ張られているから、カメさんは首が長いんだね。
  体は重いし、動きも遅いから、僕だったらずっと動かないよ、めんどうだもの。
  でもカメさんは、泳いだり石に上ったり、とても乗り越えられなさそうなタライの縁を乗り越えたり、果てには池のある公園に行こうとしているでしょ?
  空想する力がすごいからだよ」
 「そうかな?もっと早く動けたらと空想するけど、早くならないよ」
 「それはそうだよ」
 モモタは続けました。
 「じっとしているから、空想は膨らむんだよ。
  カメさんは、実は早く動けるようになっているんだけれど、空想することがとても大事だから、早く動けないんだよ」
 「良く分からないけど、僕は池にある石の上でのんびりこうら干しが出来るってことだな」
 「そういうこと」
 2匹は笑いました。
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