猫のモモタ

緒方宗谷

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大好きな家族の話

怒られると小さくなるけど、なぐさめられると大きくなれる

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 良い匂いがします。今日のお夕食は、お刺身です。
 ご飯を作っているときのママは、とても素敵です。
 パパや佑ちゃんの健康を思ってお料理するから、愛に溢れていて、モモタはとても大好きです。
 「ママ、ママ、僕もお刺身食べたいよ」
 「ちょっと待っていてね、モモタにもちゃんと分けてあげるから」
 ママはそう言いますが、いっぱい遊んだモモタは、お腹が空いて我慢できません。
 可愛いスリッパの周りを行ったり来たり、スリスリアピール。ママが食卓に行った隙に、まな板のところへヒョンとジャンプ。
 「やったぁ、お刺身1つつまんじゃおう」
 足を滑らしたモモタは、床に落っこちてしまいました。にゃんとお刺身も一緒に。とっさに引っかけた爪で、まな板ごとです。
 目の前に包丁が落ちてきて、びっくりしたモモタは、フニャニャニャニャ~と、一目散です。
 「ママ、ごめんなさい、美味しいお夕飯ダメにしちゃった」
 しばらくして、キッチンに戻ってきたモモタは、お片付けするママの背中に言いました。
 「大丈夫、モモタ?包丁で怪我していないかしら?」
 振り向いたママは、とても優しくニッコリです。
 「どうして僕のこと怒らないの?お刺身ダメにしちゃったんだよ」
 「良いのよ、そんな風に鳴かなくても、私は怒っていないから。
  そんなことよりも、モモタに大事がなくて良かったわ。
  だって、私には、お刺身なんかよりモモタの方が大事だもの」
 メッ!!とも言わないママの優しさに触れて、モモタは本当に反省しました。
 その日のご飯は、落としたお刺身分豪華でしたが、反省のために近所の子猫にあげました。
 お礼を言う母猫は言いました。
 「ママは、本当にあなたのことを愛してるのね、羨ましいわ。
  普通、愛ってとてものんびり屋さんなのよ。
  でもね、おこりんぼはとてもせっかちさんだから、こっちが先に出てきてしまうのよ。
  それなのに、おこりんぼがお寝坊さんなのは、心配性が寝かしつけてくれていたから。
  ママの心の中には、モモタ君を大好きな気持ちしか住んでいないのね」
 モモタは、日頃の恩返しのために、ママのお布団に入っ温めてあげました。
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