103 / 500
力に頼るマスの話
理想と現実の差に膝をついても、振り向けばほら、別の理想が寄り添ってくれるよ
しおりを挟む
川の上流にやって来ると、泣いているマスが、何匹も流されて来ました。
「どうしたの?」
「うん、もっと上の方にイジメッ子がいてね、いっぱいご飯がとれる所を1人で陣取っちゃったんだ。
それで、みんな追いやられて流れて来たというわけさ」
モモタが行ってみると、だんだんと川が狭くなって来ました。大きな石がゴロゴロしていて、左右は高い土の崖に囲まれています。
「こんなところに、まだ魚が要るのかなぁ?」
崖の木は根っこがむき出しで、ちょっと怖い気がしてきました。それでも進み続けて、ようやく1匹のマスに出会いました。
「沢山のマスが、泣きながら流されてきたけど、君が泣かしたのかな」
「だとしたらどうなんだ?」
「何でそんなことするの?団らんって言葉知らないの?」
「みんなと分け合えって言うのか?そんなことできるもんか!」
マスは聞いてくれないので、カブトムシの話を教えてあげました。
「僕知ってるんだ、そんなことをしていると、いつかひどい目に遇うよ」
話を聞き終わったマスは、モモタに言います。
「君は家猫だろ?ここがどんなところか知らないんだ。
君は毎日食べるに困らなかったかもしれないけど、ここは違う。
ご飯はたまにしか流れてこないのさ。
何日も食べれないことだってあるんだよ」
信じられなさそうなモモタをよそに、マスは続けます。
「どうやって、1匹の虫を10匹のマスで分けるんだ?」
モモタは答えられません。マスは付け加えました。
「ここで食べていけるのは、僕だけさ。
ご飯は下流より多いけど、流れも早くて滝がいくつもある。
ここに暮らすのは、簡単じゃない。
でも下流は、ご飯は少ないけど、流れは緩やかで滝もない、川幅も広いから、同じ場所に何匹も住めるんだ」
泣いていた子達を思うと、やはりみんなで上流に住めたらと思うモモタでした。
「確かに君の言うカブトムシと僕は同じかもしれない。
みんなで助け合えるのが、一番素晴らしいことだって知っている。
でも、みんなをここに住まわせたら、みんな餓えてしまうよ。
みんなはみんなの力に合わせて、住めるところに流れていったんだ。
ここに住みたいって夢は破れたけど、下流に夢や幸せがないわけじゃない。
泣いてた彼らが笑えるかは、彼ら次第さ」
モモタは、自然の厳しさを目の当たりにして、自分がどれだけ恵まれて育ったのかを知りました。
「どうしたの?」
「うん、もっと上の方にイジメッ子がいてね、いっぱいご飯がとれる所を1人で陣取っちゃったんだ。
それで、みんな追いやられて流れて来たというわけさ」
モモタが行ってみると、だんだんと川が狭くなって来ました。大きな石がゴロゴロしていて、左右は高い土の崖に囲まれています。
「こんなところに、まだ魚が要るのかなぁ?」
崖の木は根っこがむき出しで、ちょっと怖い気がしてきました。それでも進み続けて、ようやく1匹のマスに出会いました。
「沢山のマスが、泣きながら流されてきたけど、君が泣かしたのかな」
「だとしたらどうなんだ?」
「何でそんなことするの?団らんって言葉知らないの?」
「みんなと分け合えって言うのか?そんなことできるもんか!」
マスは聞いてくれないので、カブトムシの話を教えてあげました。
「僕知ってるんだ、そんなことをしていると、いつかひどい目に遇うよ」
話を聞き終わったマスは、モモタに言います。
「君は家猫だろ?ここがどんなところか知らないんだ。
君は毎日食べるに困らなかったかもしれないけど、ここは違う。
ご飯はたまにしか流れてこないのさ。
何日も食べれないことだってあるんだよ」
信じられなさそうなモモタをよそに、マスは続けます。
「どうやって、1匹の虫を10匹のマスで分けるんだ?」
モモタは答えられません。マスは付け加えました。
「ここで食べていけるのは、僕だけさ。
ご飯は下流より多いけど、流れも早くて滝がいくつもある。
ここに暮らすのは、簡単じゃない。
でも下流は、ご飯は少ないけど、流れは緩やかで滝もない、川幅も広いから、同じ場所に何匹も住めるんだ」
泣いていた子達を思うと、やはりみんなで上流に住めたらと思うモモタでした。
「確かに君の言うカブトムシと僕は同じかもしれない。
みんなで助け合えるのが、一番素晴らしいことだって知っている。
でも、みんなをここに住まわせたら、みんな餓えてしまうよ。
みんなはみんなの力に合わせて、住めるところに流れていったんだ。
ここに住みたいって夢は破れたけど、下流に夢や幸せがないわけじゃない。
泣いてた彼らが笑えるかは、彼ら次第さ」
モモタは、自然の厳しさを目の当たりにして、自分がどれだけ恵まれて育ったのかを知りました。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる