猫のモモタ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
42 / 502
池のある公園に住むお友達の話

日常の思いの奧に、特別はある

しおりを挟む
 もう12月です。池の奧にる大きな木に、蜜蜂の巣がありました。
 「蜜蜂さーん、こんにちはー」
 木の下で挨拶したモモタは、訊きました。
 「楽しそうにお歌を歌ってるけど、どうしたの?」
 女王蜂が巣から出てきて、教えてくれました。
 「クリスマスの準備をしているのよ」
 「うあぁ!素敵だね、蜂さん達は、どんなクリスマスを過ごすの?」
 「花粉と蜜で作ったケーキをみんなで食べるんです」
 モモタは、少し疑問に思いました。
 「いつも蜜を食べてるのに、クリスマスも蜜?角砂糖とか飴ちゃんとか、他にも甘いのは沢山あるよ。
  水飴、黒蜜、メープルシロップもお花の蜜ににているよね」
 女王蜂は笑いました。
 「そうですね、子供達もみんな大好きだし、そういうのをあげる巣もあるでしょうね」
 続けて女王蜂は説明してくれました。
 「私達の体に一番良い食べ物は、蜜なのです。
  甘くて美味しいからって、他のを沢山食べると、却って毒になってしまうの。
  確かに、特別な日だから、子供達の喜ぶようにしてあげたいけれども、親の私としては、目先の喜びようを与えるのではなく、過去を後悔しない未来を与えてやりたいと思っているのですよ」
 モモタは分かりません。
 「まだ未来じゃないのに、どうやって過去を後悔できるの?1日くらい大丈夫だよ。
  それに、食べなかったことで、後悔するかもしてないでしょう?」
 子供のモモタとしては、羽目を外したい1日です。
 「うふふ、あなたの言う通りね。
  子供を思っているとか、体に良いからと言って子供達に押し付けたら、子供の心は育たないでしょうね。
  だから、後悔しないように、色々な蜜を集めてきて、お砂糖や飴ちゃんに負けないケーキを作るのよ。
  子供達の喜ぶ様子を見て、毎年改善するのです」
 モモタはビックリしました。
 「近くにお花畑があるし、近所のお家にも沢山のお花が咲いてるのに、あなたの巣の蜂がとても遠くで蜜を集めてるのって、クリスマスのため?まさか違うよね!?」
 女王蜂は、モモタを誉めてくれました。
 「大当たりよ。
  クリスマスは特別な日ですもの。
  みんな、弟や妹達に後悔させたくないの」
 12月24日のためだけに、1年間頑張っている事知って、モモタはとても感心しました。
 それを見た女王蜂は、言いました。
 「モモタさんの家族も同じなはずよ。
  だって、あなたはとても健やかに成長していますものね。
  他の猫ちゃんよりも元気だし、毛色のツヤも綺麗ですから」
  家族に大切にされていると言われて、モモタはとても嬉しくなりました。
 クリスマスがとても楽しみです。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

お姫様の願い事

月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。

王女様は美しくわらいました

トネリコ
児童書・童話
   無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。  それはそれは美しい笑みでした。  「お前程の悪女はおるまいよ」  王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。  きたいの悪女は処刑されました 解説版

理想の王妃様

青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。 王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。 王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題! で、そんな二人がどーなったか? ざまぁ?ありです。 お気楽にお読みください。

リトル・ヒーローズ

もり ひろし
児童書・童話
かわいいヒーローたち

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

子猫マムと雲の都

杉 孝子
児童書・童話
 マムが住んでいる世界では、雨が振らなくなったせいで野菜や植物が日照り続きで枯れ始めた。困り果てる人々を見てマムは何とかしたいと思います。  マムがグリムに相談したところ、雨を降らせるには雲の上の世界へ行き、雨の精霊たちにお願いするしかないと聞かされます。雲の都に行くためには空を飛ぶ力が必要だと知り、魔法の羽を持っている鷹のタカコ婆さんを訪ねて一行は冒険の旅に出る。

フラワーキャッチャー

東山未怜
児童書・童話
春、中学1年生の恵梨は登校中、車に轢かれそうになったところを転校生・咲也(さくや)に突き飛ばされて助けられる。 実は咲也は花が絶滅した魔法界に花を甦らせるため、人の心に咲く花を集めに人間界にやってきた、「フラワーキャッチャー」だった。 けれど助けられたときに、咲也の力は恵梨に移ってしまった。 これからは恵梨が咲也の代わりに、人の心の花を集めることが使命だと告げられる。   恵梨は魔法のペンダントを預けられ、戸惑いながらもフラワーキャッチャーとしてがんばりはじめる。 お目付け役のハチドリ・ブルーベルと、ケンカしつつも共に行動しながら。 クラスメートの女子・真希は、恵梨の親友だったものの、なぜか小学4年生のあるときから恵梨に冷たくなった。さらには、咲也と親しげな恵梨をライバル視する。 合唱祭のピアノ伴奏に決まった恵梨の友人・奏子(そうこ)は、飼い猫が死んだ悲しみからピアノが弾けなくなってしまって……。 児童向けのドキワクな現代ファンタジーを、お楽しみいただけたら♪

処理中です...