猫のモモタ

緒方宗谷

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何にも動じない蛙の話

1人でいることで見えてくる心の奧

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 もう秋です。何やらカエルがせっせとお庭を掘っていました。
 「蛙さん何をしてるの?」
 「あら、モモタ君、こんにちは。
  もう寒いからね、これから冬眠しようと思ったのよ」
 「春まで寝てるの?真っ暗な中で1人で寝てるなんて、寂しくないの?」
 「そんなこと無いわ、1人でいる時間だって、必要よ」
 モモタは信じられません。
 「春までなんて長いでしょ?退屈しちゃうよ」
 「それが良いのよ。
  色々なことが思い浮かぶの。
  難しくなくて良いのよ、ボンヤリとね。
  師走の忙しさとか、全部忘れていくのよ。
  双葉と共に顔を出すと、とてもスッキリしているの」
 モモタはよく分かりません。
 「寝る子は育つやつ?」
 「それとは違うわね。
  心にアカが溜まると、退屈になるのよ。
  退屈が嫌だから、みんな忙しくするようになるの。
  でも、冬眠するとアカが落ちて、心がとても軽くなるのよ」
 「本当?そうしたら、お空も飛べるかな?」
 キラキラした目で聞くモモタに、蛙は真面目に答えました。
 「飛べるかもしれないわ。
  だって、信じないことを忘れてしまうから」
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