猫のモモタ

緒方宗谷

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自分大好き蛾の話

勇気を挫くのは、誰でもないよ、自分だよ

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 ワンワンという鳴き声に混じって、助けてーと聞こえてきました。
 友達の声だったので、急いでモモタは見に行きました。
 いつも慕ってくれる子猫が、2匹の犬にカラまれています。
 「やめなよ、怖がってるでしょ」
 モモタは勇気を出して言いましたが、犬達はモモタにもカラんできます。
 1匹が迫ってきて、怖くなったモモタは逃げてしまいました。
 「どうしよう僕、あの子を見捨てちゃたよ」
 声にならない声をあげて、涙をボロボロ溢しながら、走ります。
 ただならぬ様子に気がついた蛾は、木の枝から飛んできて、訊きました。
 「何を泣いているんだ、モモタ君?」
 「あのね、僕、お友達を見捨ててきちゃったんだ。
  大きな犬とケンカする勇気がなくて、逃げてきちゃったんだよ。
  僕弱虫なんだよ」
 大粒の涙が、また溢れてきました。
 「落ち着くんだ、諦めちゃいけないよ。
  確かに、君は犬には敵わないかも知れないけど、だからといって、勇気がないわけじゃないんだよ」
 ヒック、ヒックとしながら、モモタは聞きます。
 「方法を考えるんだ。
  犬とケンカしなくても、お友達を助ける方法があるはずさ。
  負けるって言うのはね、相手に勝てないことじゃないんだ。
  諦めることを言うんだよ」
 モモタは考えました。思い付かなかったけれど、走ってあの子のところまで戻ります。
 「にゃ~ん!にゃ~ん!誰か助けてぇ!!」
 モモタが必死に叫んでいると、2人の高校生が気づいてくれました。
 「あの子猫、どうしたのかな?あんなに必死にして。
  きっと何かあったのよ」
 女の子が言いました。2人は必死にモモタを追いかけます。
 追い詰められた子猫を見るや否や、男の子が鞄を振り回して、犬を追い払いました。
 「助けてくれて、ありがとー」
 モモタと子猫はお礼を言って、蛾と3匹で帰りました。
 蛾は、モモタを誉めて言いました。
 「今の君は、とても輝いているよ。
  なんせ、あの大きな犬達から、お友達を救ったんだからね」
 「僕は何もしてないよ」
 照れるモモタに、蛾は言います。
 「強い者から逃げたくなるのは、誰だって一緒さ。
  あの犬達だって、もっと強い人間の前では、逃げていっただろう?強ければ勇気があるわけじゃないのさ。
  敵わない相手を前にした時、諦めず必死に方法を考えて、実行するのが、勇気なんだよ。
  勇気があるというのは、自分の弱さに打ち勝つことを言うんだよ」
 モモタと子猫は、もっと仲良くなりました。
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