猫のモモタ

緒方宗谷

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イジメられっ子のカラスの話

気が付いていないだけで、才能は溢れているんだ

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 ある日、お庭のすみに、白いカラスが落ちてきました。
 「大丈夫?空が飛べるのに、落ちることがあるんだねぇ」
 良く見ると、怪我をしているようです。慌てるモモタに、カラスは言いました。
 「実はね、僕、イジメられているんだ。
  カラスなのに真っ白だなんて、おかしいんだって。
  それにナヨナヨしていて、男の子じゃないって言うんだ」
 「そんなこと無いよ、僕は白くて格好良いと思うな。
  近くでよくよく見ると、カラスって凛々しい姿をしてるんだね。
  昨日まで、カラスは怖いと思っていたんだ。
  だって、くちばしは大きいし、爪だってこんなでしょ?とてもお友達にはなれないなぁ」
 カラスは、涙を流しながら、うなだれて言います。
 「ほら、君だって、そんな事を言う。
  なんだって僕はカラスなんかに生まれてしまったんだろう。
  こんなことなら、生まれなければ良かったんだ」
 「ゴメンよ、そんなこと無いよ、そんな事言ったら、お母さんが悲しむよ。
  それにカラスがいやなら、やめてしまいなよ」
 「そんな事出来ないさ。
  だって、僕カラスだよ、ウサギだって言ったって、カラスだよ」
 モモタは、嘆くカラスに言いました。
 「そんなこと無いよ。
  僕のお友達は、芋虫からサナギになって、華麗な蝶々になるんだ。
  毛虫のお友達は、いつか空を飛ぶんだって言って、木のてっぺんまで登って、どこかに行ってしまったんだ。
  きっとお空を飛べたんだよ。
  願い事は、本気で願えば叶うって事じゃない?」
 カラスは恥ずかしそうにモジモジしながら、打ち明けます。
 「実は僕、お花になりたいんだ。
  お花って、みんなきれいだろう?嫌いな子達を見た事無いもの」
 モモタは教えてあげました。
 「むこうの学校にね、白くて可愛いチューリップの花壇があるんだ。
  今ちょうど見頃だと思うよ。
  君の白さは、あのチューリップに負けない白さだから、比べてごらんよ」
 白いカラスはお礼を言って、飛んでいきました。
 しばらくして学校に遊びに行くと、花壇の中から、あのカラスが声をかけてきました。
 「僕はチューリップになったんだ。
  どうだい、可愛くて綺麗だろ?」
 白いカラスは、花壇の中に巣をつくって住んでいました。悪い虫を食べて花を守っています。糞は肥料になりました。
 学校の子供達も、白いカラスが珍しくって、お友達になってくれました。
 モモタは思いました。
 「カラスのままでも人とお友達なれたし、白いからこそチューリップになれたし、凛々しいくちばしのお陰で、より綺麗になれた。
  ダメだと泣いていたところが、素晴らしいところでもあるんだ」
 カラスは何も変わっていません。幸せになれたのは、自分に自信が持てたからでした。
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