エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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地獄の入り口

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 ウィード領の町や村はそのほとんどが滅んでいた。辛うじて生き残った人々を保護し、避難民をキルメキアに向かわせる。
 王都に近い町や村の住民は腐った死体とかして、いたるところから連合軍を襲ってきた。
 ようやく王都に到着した先遣隊の報告によると、既に城は陥落しているらしい。ウィード王や仕えている者たちの生存は分からないが、あまり期待できないだろう。
 天には堕天使や悪魔が飛び回っている。ウィード城を進軍の拠点にすべく、連合軍は3軍にわかれて城下への侵入を試みる。
 右翼と左翼は、町のめぼしい建物を奪取して拠点を築き、天を舞う堕天使や悪魔から、城に攻め上がる中央の軍勢を援護した。
 城壁の周りには、元兵士だったアンデットがウヨウヨとしている。突撃のラッパが鳴り響くと、迫りくるアンデットを排除しながら前衛部隊が城へとなだれ込む。
 敵の数は多かったが、統率する死霊使いを欠くアンデットは瞬く間に掃討され、城は解放された。
 残念なことに、国王と大臣たちはアンデットと化し、王妃も侍女たちも食い殺されていた。だが、食い破られていない結界に守られた部屋があって、幾ばかりかの生存者を発見した。
 「ああ、ありがとうございます、フィーリアンの皆様」
 唯一生き残った王族の姫が、皆を代表してお礼を言う。
 「我々が来たからには、もう安心です。ウィード国王のことは大変残念ですが、陛下の仇は必ず我々がとります」
 連合軍を束ねるフィーリアン王室第七騎士団の団長が姫にそう言うと、生き残った女と兵士を徴用しするために、続けて言った。
 「我々は、ズメホスとの戦いの最前線の砦として、この城を借り受けます。どうか、生き残った者たちは、みんなして兵士達の世話をしていただきたい」
 彼女たちに選択の余地は無かった。既に国王は戦死し、専制君主制を敷いていたこの国は、もはや国として機能していない。
 どうする術も無いウィード王室の侍従や兵士は、フィーリアン軍の配下に編入された。
 フィーリアン領内において、主要なドミニオンはミリィたちによって滅ぼされていた。更に、堕天したルーゲイル一派を追撃した天使たちに力のある堕天使は打ち取られていたから、堕天使の群れには最下級のエンジェルしかいなかった。
 そのおかげで大きな損害を受けることなく取り戻した城に保護した人々を匿い、連合軍の本隊は、飛竜騎兵によるダークエンジェルの掃討を援護しながら、陸と海峡を使って、ズメホスが封印されていた洞窟へと向かった。

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