エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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死の大地

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 ケース青年団と書かれた小さな鉄の盾を持つ兵士の間から、見慣れたフィーリアンの鎧を着た兵士が出てきた。
 「遅かったですね、心配しましたよ」
 「すごい警備ね・・・、これが当たり前なの? それとも天使が・・・」
 「これで普通らしいですよ・・・、それより中へ」
 フィーリアン王室でも、死の大地に関することを調べていてくれたらしい。商人から得た情報に、レイドラードに属するケースの町があることを知り、国王の命令で保存食や旅の資金を持ってきてくれたのだ。
 レイドヤードは市国と名乗っているが、現在は周辺の町も傘下に収めて、侯国化しつつあったらしい。
 3日分のお金では賄いきれない距離を旅していた2人は、バイトバイトの毎日で、ここまで来るのにさらに長い日数を要した。ミリィは、もっと早くほしかった・・・と、へたり込んだ。
 1週間前に到着していたフィーリアン兵から大体の事情を聞いて知っていた青年団は、領主のところへ案内する、と言ってくれた。
 属していたレイドラードが滅亡した今、この町は市国として独立したわけだ。領主も大公・・・、いや、このくらいの町なら、爵位はもっと下か。そもそも属していたレイドラードが侯国(化しつつある)だったから、大公とか侯爵とか呼んで良い規模ではないはず。侯爵より位が下がって伯爵? 子爵?
 ちょっと考えて、ミリィは「まあ良っか」と思った。
 対外的に領主の爵位がどう認識されるのかは別にして、何であっても内政的には国家元首となったはず。
 2人は1人の兵士に案内されて土を固めて築いた塀をくぐり町へ入ると、そこには石造りの家が立ち並ぶ、町らしい町が広がっていた。
 「こんな辺境の町だから、寂れてるのかと思ったけど、ちゃんとしてるのね」
 「僕が生まれる前は、もっと栄えてたらしいです。昔、ある本を奪いに魔族がやってきましてね。ほとんどの人が死んじゃって、やっとここまで復興したんですよ」
 青年団の男はミリィの言葉に少しムッとしたが、顔には出さず笑顔で答えた。
 「ある本?」
 テレパシーでなんとなく分かったが、無視して質問する。
 「この町にやってきた堕天使が置いていった本です。盗られちゃったんですけどね・・・魔族に」
 本の内容は、少し解読したところで奪われてしまったためほとんど分からないが、神語で書かれていたらしい。
 「写しとかは残ってないの?」
 「全然・・・」
 もしかしたら天人のことが分かると思ったが、そう簡単にはいかないみたいだ。そうこうしているうちに、領主パウの住む館にたどり着いた。死の大地からこれだけ近ければ、遺跡の位置が載った地図があるかもしれない。

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