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天人
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森を出ると、2人を見つけたフィーリアン兵が3人ほどこっちに向かってくる。
「ミリィ殿!! 降魔戦争以前のエスプスに関する情報を手に入れましたぞ!!」
兵士の話を詳しく聞いて、ミリィは愕然とした。なぜなら、ここから南にある死の大地と呼ばれる場所に、古代エスプスの駐屯地だったと思われる遺跡がある、という情報だったからだ。
死の大地・・・、その名のとおりアンデットが多く巣食う大地である。フィーリアンの国境を越え、オーストウエル王国、コーレウン王国、ゼウーン公国の向こう・・・、結構な日数を覚悟しなければならない。
兵士は、ゼウーン公国の先に国は、レイドラード市国しか確認していないと言う。中央大陸中一番の辺境地である上、ここ数年ゼウーンとは国家レベルで国交がないのだ。そのため、ゼウーンより先のことは風便りの状態らしい。
仲が悪くなったというわけではない。ある日突然、連絡がなくなった。何度か調査隊を派遣したが、それも帰ってこなかったという。
「ふぇぇぇぇ~!! 止めましょーよ~」
サラはビクビクしながら、ミリィを上目使いで見た。
「ううん、ずっと前から死の大地って呼ばれてたみたいだし、誰かが法術でアンデットの身を保たせている可能性も在るわ。
アンデットだって、ほっとけば自然に朽ち果ててしまうんだから」
そうサラに説明しながら、用意してくれていた2頭の馬を受け取った。
街道が整備されているからそれほど苦労なくいける距離だったが、倍の時間がかかって、ようやくゼウーンを抜け、レイドラードへと繋がる草原に出た。
「ミリィさん、あれっ!!」
サラの指差す方向に、背が高く細い木が立っている。その根元にもたれかかるようにして、男がうずくまっているのが見える。馬から下りその男に近づくと、まだ息があった。
ミリィが霊力を注ぎ込み、サラがリカバリーを唱える。
「ん、んん・・・」
「気がついた?」
2人はホッとして微笑みながら話し掛けたが、男は混乱した様子でわめきだした。
「たっ! 助けてくれ!!天使が・・・、天使がレイドラードを・・・ぐぶゅっ!!」
突然、腐ったトマトをつぶしたようになり、蒸発していく。2人は数秒顔を見合わせてから、急いでレイドラードへ向かった。
市国をすっぽり覆う高い塀が見えてくると同時に、すごい神気が、白い霧のようになって充満しているのが見える。ドミニオン以上の天使がいるのか、若しくは大量の天使がいるようだった。
「ミリィ殿!! 降魔戦争以前のエスプスに関する情報を手に入れましたぞ!!」
兵士の話を詳しく聞いて、ミリィは愕然とした。なぜなら、ここから南にある死の大地と呼ばれる場所に、古代エスプスの駐屯地だったと思われる遺跡がある、という情報だったからだ。
死の大地・・・、その名のとおりアンデットが多く巣食う大地である。フィーリアンの国境を越え、オーストウエル王国、コーレウン王国、ゼウーン公国の向こう・・・、結構な日数を覚悟しなければならない。
兵士は、ゼウーン公国の先に国は、レイドラード市国しか確認していないと言う。中央大陸中一番の辺境地である上、ここ数年ゼウーンとは国家レベルで国交がないのだ。そのため、ゼウーンより先のことは風便りの状態らしい。
仲が悪くなったというわけではない。ある日突然、連絡がなくなった。何度か調査隊を派遣したが、それも帰ってこなかったという。
「ふぇぇぇぇ~!! 止めましょーよ~」
サラはビクビクしながら、ミリィを上目使いで見た。
「ううん、ずっと前から死の大地って呼ばれてたみたいだし、誰かが法術でアンデットの身を保たせている可能性も在るわ。
アンデットだって、ほっとけば自然に朽ち果ててしまうんだから」
そうサラに説明しながら、用意してくれていた2頭の馬を受け取った。
街道が整備されているからそれほど苦労なくいける距離だったが、倍の時間がかかって、ようやくゼウーンを抜け、レイドラードへと繋がる草原に出た。
「ミリィさん、あれっ!!」
サラの指差す方向に、背が高く細い木が立っている。その根元にもたれかかるようにして、男がうずくまっているのが見える。馬から下りその男に近づくと、まだ息があった。
ミリィが霊力を注ぎ込み、サラがリカバリーを唱える。
「ん、んん・・・」
「気がついた?」
2人はホッとして微笑みながら話し掛けたが、男は混乱した様子でわめきだした。
「たっ! 助けてくれ!!天使が・・・、天使がレイドラードを・・・ぐぶゅっ!!」
突然、腐ったトマトをつぶしたようになり、蒸発していく。2人は数秒顔を見合わせてから、急いでレイドラードへ向かった。
市国をすっぽり覆う高い塀が見えてくると同時に、すごい神気が、白い霧のようになって充満しているのが見える。ドミニオン以上の天使がいるのか、若しくは大量の天使がいるようだった。
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