エスパー&ソーサラー

緒方宗谷

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ゴブリン

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 「ん、んん?」
 完成した巨大結界が巻き起こす竜の唸り声のような猛風の音で、ミリィは目を覚ました。ミリィは死んではいなかったのだ。何がなんだか状況を把握しきれないが、近くに村がないのはわかった。気を失っている間にゴブリンによって移動させられたようだ。
 顔を上げると木々が舞うほどの荒れ狂う風の中央に、高くかざした両手を堅く握り締めたばかりのサラが立っている。振り下ろせば法術が発動するのは明白だ。
 「精霊さん・・・、森が少しなくなるけど許してくれる?」
 精霊たちはみんな踊りを踊る者たちが出るほどノリノリで、笑いながらゴーサインを出している。
 ミリィは青ざめた。
 「ちょっと! ちょっと! ちょっと待って~!!」
 吹き飛ばされないように姿勢を低くするゴブリンから逃れようと、ミリィは暴れながら叫んだ。
 「あぁ、天からミリィさんの声が聞こえるわ。・・・きっとわたしを応援してくれるのね」
 木々の狭間から覗く空を見上げるサラの瞳には、大粒の涙があふれ出ていた。
 「ミリィさん・・・、たった2日だけの付き合いだったけど、とても楽しかったです。安らかに成仏してください」
 サラはミリィに対して追悼の意を表しながら、ゴブリンロードを睨みつけた。ミリィの姿は目に入っていないようだ。
 「あ~!! お願いだから止めて~!!」
 ミリィの瞳にも涙がちょちょぎれている。
 「いっけ~!!」
ドドドドドドド・・・・
ズドゴォォォン!!
 「ブギィィィィィィ!!」(78匹)
 「ひぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!」
 ゴブリンの数が相当減ってきていたことと、発動した法術の中央にいるサラが村からだいぶ離れていたことが幸いし、村への被害はなかった。森への被害も案外少なかったが、サラの周りに鎮座していた古代樹は全て薙ぎ払われ、土は乾ききり砂のようにサラサラになってしまっていた。
 風が強すぎて息ができずミリィとラングは窒息死しかけたが、風の王はミリィとラングを敵として認識しなかったため、命は助かった。精霊術はその力自体に意思があるため、敵と味方を見極めて攻撃するのだ。
 死にかけたミリィとラング、ミリィが生きていると知ったサラの3人は、陽がくれて朝日が昇る頃まで放心状態だった。
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