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ゴブリン
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「ラングさん、あれ!!」
サラが指差す方向を見ると、ミリィを抱えあげて剣を突きつけるゴブリンが3匹いる。真ん中にいるゴブリンは、普通のゴブリンの2倍以上ほどもある巨漢。人間の大人の男と変わらない大きさだ。
右手には、やはり錆びていたものの骨ごと寸断されてしまいそうな大きなサーベルを持ち、最近人間を襲って奪ったのか、いくつもの大きな傷のついた真新しい鎧の胸当てを装備していた。ある程度知能があるのか、身繰り手振りで、手を出すなと言っている。
ラングは愕然とした。
「ゴブリンロードまでいやがる! 距離をとって戦っていたのは、ミリィ殿を人質に取るためか!!」
途方にくれるラングのよこでサラは勢い込み、両手を握り締め気合を入れた。
「貴方の死は無駄にはしません!! ミリィさんの不名誉な死を隠蔽するために全力で戦い、証拠を闇に葬ってあげます!!」
突然発生した光が身構えたサラを包み込んだ。実体化した精霊たちがその光より濃い光を指先に発っし、魔法陣を形成させ始める。
ゴブリンロードの雄叫びと同時に、ゴブリンが一斉に襲い掛かってきた。ラングはサラを守るべく、迫り来る攻撃をシルバーグレードで受け止める。しかし、サラの援護があったときとは違い、人間の5倍とも言われるゴブリンの力ある一撃に、大きく吹き飛ばされた。
目を瞑り呪文詠唱への段階を踏むサラは、守るものがなくなり無防備となったように見える。ゴブリンは、その1人の少女が見えなくなるくらい大勢で囲み飛び掛った。
しかし、結界に侵入したゴブリンは、術の過程で発生した精霊のアリアと呼ばれる絶対防御結界により細かく切り刻まれてただの肉片と化し、台風に吹き飛ばされる生ごみのように辺り一面にふき散らばる。
絶対防御結界とは、物理的・精心的攻撃、すなわち、剣や魔法などによる攻撃を無効化させる事のできる結界だ。絶対防御といっても、どんな攻撃に対しても対応できるというだけで、上級魔法など威力のある攻撃に対しては、中和することはできても防ぎきることはできない。
ミンチになった仲間を見たゴブリンたちは恐怖し、威嚇はするものの攻撃を仕掛けてくる者はいなくなった。しかし、邪霊を味方につけるゴブリンは、その邪霊たちから情報を得たのか、呪文が完成しにくくなるよう土や枝などを放り込んでくる。
だが、ゴブリンはゴブリンだ。身を投じるならともかく、こんなことをしても事態を0コンマ数秒先送りしただけで、すぐに魔方陣は完成した。
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
胸の前にかざした両腕をゆっくりと上方に広げながら呪文を唱えると、それの声に反応し、完成した結界の四方に小さな結界が形作られた。
サラが指差す方向を見ると、ミリィを抱えあげて剣を突きつけるゴブリンが3匹いる。真ん中にいるゴブリンは、普通のゴブリンの2倍以上ほどもある巨漢。人間の大人の男と変わらない大きさだ。
右手には、やはり錆びていたものの骨ごと寸断されてしまいそうな大きなサーベルを持ち、最近人間を襲って奪ったのか、いくつもの大きな傷のついた真新しい鎧の胸当てを装備していた。ある程度知能があるのか、身繰り手振りで、手を出すなと言っている。
ラングは愕然とした。
「ゴブリンロードまでいやがる! 距離をとって戦っていたのは、ミリィ殿を人質に取るためか!!」
途方にくれるラングのよこでサラは勢い込み、両手を握り締め気合を入れた。
「貴方の死は無駄にはしません!! ミリィさんの不名誉な死を隠蔽するために全力で戦い、証拠を闇に葬ってあげます!!」
突然発生した光が身構えたサラを包み込んだ。実体化した精霊たちがその光より濃い光を指先に発っし、魔法陣を形成させ始める。
ゴブリンロードの雄叫びと同時に、ゴブリンが一斉に襲い掛かってきた。ラングはサラを守るべく、迫り来る攻撃をシルバーグレードで受け止める。しかし、サラの援護があったときとは違い、人間の5倍とも言われるゴブリンの力ある一撃に、大きく吹き飛ばされた。
目を瞑り呪文詠唱への段階を踏むサラは、守るものがなくなり無防備となったように見える。ゴブリンは、その1人の少女が見えなくなるくらい大勢で囲み飛び掛った。
しかし、結界に侵入したゴブリンは、術の過程で発生した精霊のアリアと呼ばれる絶対防御結界により細かく切り刻まれてただの肉片と化し、台風に吹き飛ばされる生ごみのように辺り一面にふき散らばる。
絶対防御結界とは、物理的・精心的攻撃、すなわち、剣や魔法などによる攻撃を無効化させる事のできる結界だ。絶対防御といっても、どんな攻撃に対しても対応できるというだけで、上級魔法など威力のある攻撃に対しては、中和することはできても防ぎきることはできない。
ミンチになった仲間を見たゴブリンたちは恐怖し、威嚇はするものの攻撃を仕掛けてくる者はいなくなった。しかし、邪霊を味方につけるゴブリンは、その邪霊たちから情報を得たのか、呪文が完成しにくくなるよう土や枝などを放り込んでくる。
だが、ゴブリンはゴブリンだ。身を投じるならともかく、こんなことをしても事態を0コンマ数秒先送りしただけで、すぐに魔方陣は完成した。
『世界生まれし時に生まれた 大いなる力
天空と地上と青き水を奏でし 大いなる力
右に破壊の刃 右に癒しの刃
清めの衣を纏う 偉大なる風の王 わが声に耳傾けよ
破壊の刃もちいて わが前に跪かせ』
胸の前にかざした両腕をゆっくりと上方に広げながら呪文を唱えると、それの声に反応し、完成した結界の四方に小さな結界が形作られた。
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