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ゴブリン
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3人にとって負ける相手ではなかったが、向こうは森の中での戦闘に長けている。下手に手は出せず、にらみ合いが続く。ミリィが頭をポリポリかきながら言った。
「どうしようもないわね。2人とも何か作戦はある?」
ミリィは300年以上も戦争の無かった平和な国の出身の上、サイコソルジャーというのも自称で、その位を王室から頂いているわけではない。実際、グランド大陸に旅立つまで、実戦経験はゼロだった。にもかかわらず結構強いのは、幼少時分から将軍である父に受けた教育の賜物だ。
そのため、実戦経験があり軍の訓練を受けているラングと、ついでにサラにも頼ってみた。しかしラングは、突拍子も無いことしか言わなかった。
「こういうのはどうだ? ミリィ殿がビックバンであらかた倒し、その後、俺が突っ込み、サラ殿が、フレイアかなんかで出てきた奴らを一掃、ミリィ殿もライジングホーミーとかで後方支援」
ミリィは驚いて静止した。
「ビックバンなんて高度な技、わたし出来ないわよ!!」
「爆炎系の呪文も使えませんよ、森の中だし」
「くそっ!! ゴブリンごときに引けをとるとは・・・、騎士の名が泣く」
こぶしを握り締めて自分の不甲斐なさを嘆くラングを見ていると、世界の英雄であるフィーリアンも地に落ちたなぁ、とミリィは思う。
この1000年ちょっとの間だけでも大小8回あった対神・魔戦争において、フィーリアン王国は、グランド大陸の国々をまとめて、猛然と天使や悪魔に立ち向かった勇者の国なのだ。
100年前に終焉を迎えたが、300年続いた大戦期においても、幾度となく大遠征してきたラルガルマンの大軍は、フィーリアン領を守る東西南北にそびえる砦を落すことができず撤退せざるをえないほど、過去のこの国は強かった。
旧世界が崩壊した頃にこの国を建国した、初代の国王であるフィーリアネス・フィーリアンという女王は、今でも世界中で有名だ。中一(宮廷学校)のとき世界史で習ったのを覚えている。
数千年前に起こった4度目の最終戦争によって神・人・魔の均衡は崩れ神魔による物質界の支配は終わりを告げた。
旧世界において、神や悪魔は信仰の対象だった。ひれ伏し仰ぎ、信仰心や貢物、生贄などのかわりに神魔の強大な力を借りて人の世界は動いていたが、世界の崩壊に至った後は、物質界の霊たち、すなわち人の霊をはじめとした精霊や妖精などの霊も開放されたため、宗教を介さなくとも超常的な力を使える世界となった。
しかしその反面、神界・魔界の関与が薄くなって物質界の独立性が高くなると、押さえつけられてきた霊たちが力を増していく事となった。
それは別に悪いことではないが、この世界で生み出されあふれ出る恐怖などを食する者(神や魔)がいなくなり、いつしか、それに取り込まれたもの達がモンスター化したり、支配者を失った霊が邪霊などの悪い方向に霊格が上がる結果を招いた。そのため、必ずしも人間が絶対優位に立てる世界ではなくなってしまった。
だからといって悪いことばかりではない。個人レベルで色々なことが出来るようになったし、サラたちのようなエルフも生まれたし・・・。
兄弟は姉と兄しかいないミリィにとって、サラは妹のようで可愛い。そう思って感慨に浸るミリィの後ろで、なぜかサラがアワアワし出す。
「げっ!! ミミミッ、ミリィさん、うしうし、後ろ!!」
ゴンッ!!
パタリ・・・
「ひえぇぇぇぇぇ~、ミリィさんが死んじゃったぁ~!!」
「サラ殿!! 俺たちも戦わないと死んでしまうぞ!!」
もともと不利気味だった形勢が、さらに悪くなってしまった。
「どうしようもないわね。2人とも何か作戦はある?」
ミリィは300年以上も戦争の無かった平和な国の出身の上、サイコソルジャーというのも自称で、その位を王室から頂いているわけではない。実際、グランド大陸に旅立つまで、実戦経験はゼロだった。にもかかわらず結構強いのは、幼少時分から将軍である父に受けた教育の賜物だ。
そのため、実戦経験があり軍の訓練を受けているラングと、ついでにサラにも頼ってみた。しかしラングは、突拍子も無いことしか言わなかった。
「こういうのはどうだ? ミリィ殿がビックバンであらかた倒し、その後、俺が突っ込み、サラ殿が、フレイアかなんかで出てきた奴らを一掃、ミリィ殿もライジングホーミーとかで後方支援」
ミリィは驚いて静止した。
「ビックバンなんて高度な技、わたし出来ないわよ!!」
「爆炎系の呪文も使えませんよ、森の中だし」
「くそっ!! ゴブリンごときに引けをとるとは・・・、騎士の名が泣く」
こぶしを握り締めて自分の不甲斐なさを嘆くラングを見ていると、世界の英雄であるフィーリアンも地に落ちたなぁ、とミリィは思う。
この1000年ちょっとの間だけでも大小8回あった対神・魔戦争において、フィーリアン王国は、グランド大陸の国々をまとめて、猛然と天使や悪魔に立ち向かった勇者の国なのだ。
100年前に終焉を迎えたが、300年続いた大戦期においても、幾度となく大遠征してきたラルガルマンの大軍は、フィーリアン領を守る東西南北にそびえる砦を落すことができず撤退せざるをえないほど、過去のこの国は強かった。
旧世界が崩壊した頃にこの国を建国した、初代の国王であるフィーリアネス・フィーリアンという女王は、今でも世界中で有名だ。中一(宮廷学校)のとき世界史で習ったのを覚えている。
数千年前に起こった4度目の最終戦争によって神・人・魔の均衡は崩れ神魔による物質界の支配は終わりを告げた。
旧世界において、神や悪魔は信仰の対象だった。ひれ伏し仰ぎ、信仰心や貢物、生贄などのかわりに神魔の強大な力を借りて人の世界は動いていたが、世界の崩壊に至った後は、物質界の霊たち、すなわち人の霊をはじめとした精霊や妖精などの霊も開放されたため、宗教を介さなくとも超常的な力を使える世界となった。
しかしその反面、神界・魔界の関与が薄くなって物質界の独立性が高くなると、押さえつけられてきた霊たちが力を増していく事となった。
それは別に悪いことではないが、この世界で生み出されあふれ出る恐怖などを食する者(神や魔)がいなくなり、いつしか、それに取り込まれたもの達がモンスター化したり、支配者を失った霊が邪霊などの悪い方向に霊格が上がる結果を招いた。そのため、必ずしも人間が絶対優位に立てる世界ではなくなってしまった。
だからといって悪いことばかりではない。個人レベルで色々なことが出来るようになったし、サラたちのようなエルフも生まれたし・・・。
兄弟は姉と兄しかいないミリィにとって、サラは妹のようで可愛い。そう思って感慨に浸るミリィの後ろで、なぜかサラがアワアワし出す。
「げっ!! ミミミッ、ミリィさん、うしうし、後ろ!!」
ゴンッ!!
パタリ・・・
「ひえぇぇぇぇぇ~、ミリィさんが死んじゃったぁ~!!」
「サラ殿!! 俺たちも戦わないと死んでしまうぞ!!」
もともと不利気味だった形勢が、さらに悪くなってしまった。
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