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対面
30ー3
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最後に訪れた3人で生活した町は、だいぶ様変わりしていたが、西ドイツと比べて経済発展をしていなかったため、どことなく当時の面影が残っているように思える。
当時支店があった場所には、違う建物が経っていた。主を失った後に再び爆撃を受けた支店は、完全に焼けてしまって、かつての建物は残骸しか残っていなかったからだ。
車で、ゴーストタウンがあった場所に行くと、いまだに古びた建物が当時のまま残っていた。完全に時代から取り残された様子であったが、ここに住んでいた人達を忘れまい、と強制連行されたであろう事をみんなに話す。
日が暮れる前にホテルに戻った一行は、一晩疲れを癒して、次の日、ピクニックをした思い出の地に行った。
春人は、幸助のお骨を3人でピクニックをした思い出の川がある草原に撒いた。ゆっくりと歩きながら池の方まで行って、そばに生えている木の根元にも撒いた。ベルリンの土も一緒に。
結局、刀の鍔は見つからなかった。
骨は長い年月をかけて土に帰っていったが、土へとなりきる前に、骨粉はメラの眠る地にたどり着いた。兄を宿す土も、一緒に母のもとに辿り着いて、そこの土と一つになった。
既にそこに木は無くなっていて、朽ちた根本だけが残っている。この先永遠に刀の鍔は見つかる事が無いのかもしれないが、そこにある石の下には確かに錆びた刀の鍔が置いてあった。
日が暮れるまで、春人は思い出の地に腰を下ろしていた。隣にはお母さんが微笑んでいて、河原では、お父さんとお兄ちゃんと弟がはしゃいでいる。
いつしか、生んでくれた両親と弟と妹もやって来て、一緒に座っていた。みんなで見る先には、3人の子供と戯れるお父さんの姿があった。
そして、新しくできた家族と共に、母が作ってくれた思い出のパンとおにぎりをみんなで美味しく食べた。
よく見ると、朽ちた木の根元には、新しい息吹が萌えていた。
春人編 完
当時支店があった場所には、違う建物が経っていた。主を失った後に再び爆撃を受けた支店は、完全に焼けてしまって、かつての建物は残骸しか残っていなかったからだ。
車で、ゴーストタウンがあった場所に行くと、いまだに古びた建物が当時のまま残っていた。完全に時代から取り残された様子であったが、ここに住んでいた人達を忘れまい、と強制連行されたであろう事をみんなに話す。
日が暮れる前にホテルに戻った一行は、一晩疲れを癒して、次の日、ピクニックをした思い出の地に行った。
春人は、幸助のお骨を3人でピクニックをした思い出の川がある草原に撒いた。ゆっくりと歩きながら池の方まで行って、そばに生えている木の根元にも撒いた。ベルリンの土も一緒に。
結局、刀の鍔は見つからなかった。
骨は長い年月をかけて土に帰っていったが、土へとなりきる前に、骨粉はメラの眠る地にたどり着いた。兄を宿す土も、一緒に母のもとに辿り着いて、そこの土と一つになった。
既にそこに木は無くなっていて、朽ちた根本だけが残っている。この先永遠に刀の鍔は見つかる事が無いのかもしれないが、そこにある石の下には確かに錆びた刀の鍔が置いてあった。
日が暮れるまで、春人は思い出の地に腰を下ろしていた。隣にはお母さんが微笑んでいて、河原では、お父さんとお兄ちゃんと弟がはしゃいでいる。
いつしか、生んでくれた両親と弟と妹もやって来て、一緒に座っていた。みんなで見る先には、3人の子供と戯れるお父さんの姿があった。
そして、新しくできた家族と共に、母が作ってくれた思い出のパンとおにぎりをみんなで美味しく食べた。
よく見ると、朽ちた木の根元には、新しい息吹が萌えていた。
春人編 完
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