FRIENDS

二年生の一学期

🐿

　杏奈だけがカウンターまで歩み寄って、キッチンをのぞく。
「調味料とかがある。キッチンの道具も、すぐに人が住めそうなくらい揃っているみたいね。整然と並んでいるから、全然生活感を感じさせないけど、誰か住んでいるのかな？」
　南がキッチンへと入って行って、お茶の準備を始めた。
「貸別荘のサイトで見つけた。この辺りは別荘地として分譲されてるみたいだけど、管理組合みたいなのはないと思うよ。貸別荘の窓口見つからなかったし」
　話を聞きながら南のあとについていった杏奈が、冷蔵庫にお肉やジュースを入れつつ質問した。
「以前はどうしたの？」
「昔過ぎて記憶ない。お父さんが電話で予約取ってた気がする。その時泊まった貸し別荘は、こういう丸太のじゃなかった。角のない角材で建てたような感じだったと思う。ここの半分くらいの大きさだったかな」
　杏奈にダイニングで休んでいるように促された務が、椅子に座って顎肘をついてキッチンに向かって話しかける。
「いい場所だね。険しい山の中ってわけでもないのに鬱蒼とした森林に囲まれていて、ななまーとから歩いてこられない距離でもないし、途中に小学校があったから、人も住んでいて安心だし」
　南が朗らかに微笑みを返す。
「ここもだいぶ変わった。小学校なんて見た記憶ないし、マンションだってなかったよ。ラーメン屋さんが一軒あるのと、あとは古い木造の民家が一、二軒あるだけだったかな。この別荘だって、以前はなかったもん」
　リビングの奥にある風呂とトイレを見て回って戻ってきた春樹が、椅子の背もたれに手をかけて言った。
「寝室は二階か」
「昼間からなに考えてんの？　夜這いとかしてきたら許さないからね」南がギラリとした目つきで忠告。
「なんでそうなるんだよ」
「昨日今日だからね、あんたたちのふしだらな視線はお見通しだからね」
　務がぎょっとしてぼやいた。
「なんで僕まで」
「もう、あきらめろ。男子はそういう扱いになる運命なんだよ」春樹は悟ったようにというか諦めた感のある声を吐く。