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緒方宗谷

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二年生の一学期

第百二十六話 栃木弁

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 すぐに次のバス停、百村通り3丁目に到着。周辺には、個人が日曜大工でリノベしたような手作り感ある何かのお店があって、その大体がガラス張りのファサードだった。
 春樹が意外そうな顔でそれらを見つめる。
「ちらほらとおしゃれな店があるんだな。この時間じゃなんの店だか見当もつかんのがあるけど。なんか黒い外装が多くね? 示し合わせてんのかな?」
「どうだろうね」南が春樹の視線のあとを追う。「でもここ何年か移住者多いって昨日おばあちゃんが言ってた」
 奈緒が食いつく。
「絶対美味しいお店だよ、開いていないのが口 惜しいねぇ」
 憤慨するように言葉を吐くが、誰にも応じてもらえずあだ花となった。
 中央商店街の交差点にある横断歩道を渡り、溶けたチーズのお化けみたいな絵のあるピザ店の横を抜けると、カジュアルな洋服店とレトロな家電やアイテムを扱うお店を見つけた春樹が、黒真珠に光をあてたように瞳を輝かせて、反対側の歩道へと駆けていった。
「すっげー、ここだけ時間が止まっているみたいだな。T型とかバイクとか、すんげー古いぞ」
 アコーディオンフェンス越しにアンティークグッズを眺めながら、そよ風になびく風船のように揺れ動いたと思ったら、バーベキューという目的を忘れてしまったのか、そのまま立ち尽くしてしまった。
 杏奈がその後ろに寄っていって、でかでかと掲げられたファサードサインを見上げて茫然とそれを読む。
「……看板を見る限りでは、有名なアメリカのバイクを取り扱っているように見えるけど、今はなんのお店なのかしら? アンティークショップ?」
「ウクライナの軍用バイクだって。すげーかっけー。軍用なのになんでこんな派手なんだよ、赤いって。狙い撃ちじゃんこんなの」
 奈緒は冷めた目で、展示物に食い入る春樹の背骨をなぞり下ろした。
「文句言ってるわりに、興奮してる」
 聞こえていないのか、春樹は返事をしない。彼の視線は、所狭しと並ぶ展示物のディティールをなぞりながら、端から端までゆっくりと移動していく。それを後追いする足取りは、名残惜しそうだ。









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