FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

第百二十四話 変わりゆく景色

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 翌日の九時過ぎ、奈緒たちは黒磯駅の前にいた。今日の予定は、鳥野目街道にある貸別荘に行って、そばの河原でバーベキューをすることになっていた。
 すこぶる快晴だったが、肌を撫でる空気は東京よりも冷たくて、心なしか空間も透き通っているように見える。
 黒いパーカーのポケットに両手を突っ込んだ南が、角地を左折した時に、ガラスの内側におりたローリングカーテンの隙間から店内をのぞき込む。
「目隠しが下ろされてるから分からないけど、おばあちゃんが朝出してくれた人参ジュース買ったのって、たぶんここかな?」
と、一人ごちりながら、灰色がかった薄緑に塗られた窓枠に収まるガラス張りの店を見上げた。
「オープン十一時だって」務が視線を落とす。
 曇りガラスの下のほうは透明で、白い花をつけた一朶の桜が水差しに生けられているのが見える。店の正面から左に伸びる裾壁として残された遺跡のような分厚い壁に左の手のひらをあてがって、全体を見渡して呟く。
「元々の建物を一部残して建て替えたのかな? それともリノベしただけなのかな? これ一つあるだけでだいぶ印象が異なるよね。古民家のよさを残して今風に改装したカフェはよく見るけど、遺物として一部を残して、新しい部分とは分離しているというか、完全に融合させないでそのままにしているのが、歴史を歴史としたまま継承したというか、連綿とはしていないんだけれど、長すぎて理解しきれない歴史の流れを切り出した水槽というか写真というか、額縁の中で視覚化されているようで、感慨深いよね」
 彼とは別に右側へと歩いていく春樹が、隣の古い日本建築の室内をガラス越しに伺っていた。ちらりと視線を送った先に掲げられた、色あせて錆の出た表札には、商店と書かれている。
「営業してんのかな? 分かんないけど。奉公にだされた女の子がいかだに乗って川を下っていくドラマに出てきそうな商いの店みたいだ。玄関の下に白いスニーカーが揃ってるから、人が住んでるのは間違いないよな」
 木格子の隙間の細さが年輪のようで、時代を感じさせる。彼がそれを指で奏でるようにやさしく弾く。中には、お煎餅屋さんかお寿司屋さんにありそうな木枠にはめられたガラスのショーケースがあって、急須などが飾られていた。
「この壁、長方形に切り出されているけど、城の石垣みたいになってるのがいいな。濃い灰色のほうは表面が整えてあって、白いほうはボコボコっていうのがシンプルなのにデザイン性を感じさせんじゃん」






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