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二年生の一学期
🐿️
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南が草むしりの手をとめ、不良座りで奈緒を見上げる。
「その気持ちを食べ物に向けなよ。魚、嫌いとか言って食べなかったら、魚にも悪いし、漁師さんにも悪いし、魚屋にも悪いし、なにより料理してくれたお母さんにも悪いからね」
「え? それはいいよ、悪くて」
まずいと思ったのか、奈緒は南に背を向けて、その場を離れた。
しばし休憩といった雰囲気が醸し出される中で、春樹が立ち上がって汗を拭う。
「さっきまで肌寒かったのが嘘のようだな。奈緒なんて脱いじゃって、もうそれ一枚だろ。そういえば、お父さんが歌ちゃん橋の近くにボランティアに行った時に俺もついて行って、他のボランティアのみんなと神社に泊まったことあんだけど、その時真冬でさ、辺り一面雪景色。その日の夜も雪降って、次の日の朝すんげー雪積もってんの。その時、泊めてもらったお礼に神社から下に下りる階段を雪かきしたんだけど、暑くて暑くて、着ていたダウンもスウェットも全部抜いで、シャツ一枚でやったっけな」
しみじみとした様子で続ける。
「今どうなってんだろ。あの時は道路以外雪に覆われていたし、俺は、公民館みたいな建物から大人たちががれきを外に出している横で細かいものをより分けてただけだったから、大したことしてないけど、少しは役に立てたのかな?」
「当時の様子はどうだったの?」杏奈が訊く。
「惨状を目の当たりにしたわけじゃないけど、ひどいありさまだったのだけは感じた。海から歌津駅がある山までなんにもなくなっていてさ。初めて行くところだったけど、ここ全部町だったんだって思って、すげぇ衝撃受けた記憶がある。歌津駅って高いところにあって、ホーム自体は残っていたんだけど、そこまで津波が押し寄せたらしい。休憩の時ホームまで登ってみたら、線路の上にがれきがあったもんな。幸いその上にある民家は無事だったみたいだけど。当時、『絆』って言葉が頻繁に使われていただろ。まざまざと実感したよ。そういう環境」
務が称えるように、言葉の一言一言に力を込める。
「親に連れられて行ったとはいえ、すごいことをしてきたと思うよ。高木の仲間意識の強さがあったからこそ、今そう思えるんだろうね」
「買いかぶりすぎだよ、俺はそんなんじゃねぇ。あの時、駅の上まで車で食いもん売りに来てるおっちゃんを見つけて、かりんとうまんじゅうとかってのを買ったんだけど、その時売ってたおっちゃんに、気を使わなくていいよって微笑みかけられて、そんなんじゃありませんって答えたけど、見透かされてたみたいで、すごく申し訳なくなった。だからもともとそうなんじゃなくて、その体験があったからこそなのかもしれない」
「その気持ちを食べ物に向けなよ。魚、嫌いとか言って食べなかったら、魚にも悪いし、漁師さんにも悪いし、魚屋にも悪いし、なにより料理してくれたお母さんにも悪いからね」
「え? それはいいよ、悪くて」
まずいと思ったのか、奈緒は南に背を向けて、その場を離れた。
しばし休憩といった雰囲気が醸し出される中で、春樹が立ち上がって汗を拭う。
「さっきまで肌寒かったのが嘘のようだな。奈緒なんて脱いじゃって、もうそれ一枚だろ。そういえば、お父さんが歌ちゃん橋の近くにボランティアに行った時に俺もついて行って、他のボランティアのみんなと神社に泊まったことあんだけど、その時真冬でさ、辺り一面雪景色。その日の夜も雪降って、次の日の朝すんげー雪積もってんの。その時、泊めてもらったお礼に神社から下に下りる階段を雪かきしたんだけど、暑くて暑くて、着ていたダウンもスウェットも全部抜いで、シャツ一枚でやったっけな」
しみじみとした様子で続ける。
「今どうなってんだろ。あの時は道路以外雪に覆われていたし、俺は、公民館みたいな建物から大人たちががれきを外に出している横で細かいものをより分けてただけだったから、大したことしてないけど、少しは役に立てたのかな?」
「当時の様子はどうだったの?」杏奈が訊く。
「惨状を目の当たりにしたわけじゃないけど、ひどいありさまだったのだけは感じた。海から歌津駅がある山までなんにもなくなっていてさ。初めて行くところだったけど、ここ全部町だったんだって思って、すげぇ衝撃受けた記憶がある。歌津駅って高いところにあって、ホーム自体は残っていたんだけど、そこまで津波が押し寄せたらしい。休憩の時ホームまで登ってみたら、線路の上にがれきがあったもんな。幸いその上にある民家は無事だったみたいだけど。当時、『絆』って言葉が頻繁に使われていただろ。まざまざと実感したよ。そういう環境」
務が称えるように、言葉の一言一言に力を込める。
「親に連れられて行ったとはいえ、すごいことをしてきたと思うよ。高木の仲間意識の強さがあったからこそ、今そう思えるんだろうね」
「買いかぶりすぎだよ、俺はそんなんじゃねぇ。あの時、駅の上まで車で食いもん売りに来てるおっちゃんを見つけて、かりんとうまんじゅうとかってのを買ったんだけど、その時売ってたおっちゃんに、気を使わなくていいよって微笑みかけられて、そんなんじゃありませんって答えたけど、見透かされてたみたいで、すごく申し訳なくなった。だからもともとそうなんじゃなくて、その体験があったからこそなのかもしれない」
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