FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
365 / 410
二年生の一学期

🐿️

しおりを挟む
 たどり着いた家は二階建てのかわら屋根の日本建築で、周辺の家々と比べると、倍近く大きい。柵に囲まれた庭は元々駐車場だったらしくアコーディオンフェンスになっていたが、家庭菜園として耕されている。
 少し進むと、南が「あれ?」と言って舳先を返す。そして半開きのアコーディオンフェンスから庭に入った。そして左に伸びる砂利の通路を行く。左側には、敷地と道路の境に植木が並んでいて、すぐ右に建物の壁があったが、整備すれば玄関までのアプローチとして活用するのに十分な幅がある。
 反対側の角まで進んで行くと、そこには大きな屋根のついた玄関が奥ばった位置に構えられていた。
 南が、新しく植えられたような雰囲気のある生垣を見やる。
「前は、ここから出入りしてたと思うけど、なんで閉じたんだろ」
 首を傾げて玄関へと歩み寄ると、縦格子とガラスの玄関引き戸を開ける。
「おばあちゃーん。南が来たよー」
 そう言って中に入って、奥をのぞく。
「あらあら、よく来ましたねぇ。道中無事でよかったわ」
 出てきたのは、白髪交じりの髪を襟足で束ねたエプロン姿の女性だった。薄墨色の腰まである長い髪に、はみ出たガタガタの髪は1本も無い。背筋の伸びた立ち姿は、細身で古枯としていながらもはつらつとしている。とても矍鑠としたおばあちゃんだ。そして、凛とした姿勢の中に優しさが感じられる、そんな人だった。
「こんにちは、はじめまして。南の祖母の、高坂美智子です。いつも孫がお世話になっております」
 深々とお辞儀をするおばあちゃんに、「こんにちは」とあいさつしたみんなは、順番に自己紹介をしてからスニーカーを脱いで、一斉に土間から敷台へと上がる。
「わ、広い。和室が二つもあるじゃん」春樹が思わず声を漏らす。
 入るとすぐ右斜め前に大体十畳くらいの和室二つと、広縁と言うには広いくらいの日当たりのよいサンルーム的な小部屋がΓ字状に並んでいて、内側にフローリングの食堂がある。それとは独立したキッチンルームまであって、在来建築であるにもかかわらず先進的な間取りに見えた。
 みんなが通された角の部屋には、大きくて茶色い重厚な座卓が置いてあって、上に紫色で短めなテーブルランナーと、色々な花がえがかれたカラフルな丸いドイリーが敷かれている。
 みんながそこに座る中、菜緒だけがあんぐりと大きく口を開けたまま、テレビのある左隣りの部屋で長押を見上げている。そこには、たくさんの絵はがきがぐるりと一周張り出されている。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

優秀賞受賞作【スプリンターズ】少女達の駆ける理由

棚丘えりん
青春
(2022/8/31)アルファポリス・第13回ドリーム小説大賞で優秀賞受賞、読者投票2位。 (2022/7/28)エブリスタ新作セレクション(編集部からオススメ作品をご紹介!)に掲載。 女子短距離界に突如として現れた、孤独な天才スプリンター瑠那。 彼女への大敗を切っ掛けに陸上競技を捨てた陽子。 高校入学により偶然再会した二人を中心に、物語は動き出す。 「一人で走るのは寂しいな」 「本気で走るから。本気で追いかけるからさ。勝負しよう」 孤独な中学時代を過ごし、仲間とリレーを知らない瑠那のため。 そして儚くも美しい瑠那の走りを間近で感じるため。 陽子は挫折を乗り越え、再び心を燃やして走り出す。 待ち受けるのは個性豊かなスプリンターズ(短距離選手達)。 彼女達にもまた『駆ける理由』がある。 想いと想いをスピードの世界でぶつけ合う、女子高生達のリレーを中心とした陸上競技の物語。 陸上部って結構メジャーな部活だし(プロスポーツとしてはマイナーだけど)昔やってたよ~って人も多そうですよね。 それなのに何故! どうして! 陸上部、特に短距離を舞台にした小説はこんなにも少ないんでしょうか! というか少ないどころじゃなく有名作は『一瞬の風になれ』しかないような状況。 嘘だろ~全国の陸上ファンは何を読めばいいんだ。うわーん。 ということで、書き始めました。 陸上競技って、なかなか結構、面白いんですよ。ということが伝われば嬉しいですね。 表紙は荒野羊仔先生(https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/520209117)が描いてくれました。

漫才部っ!!

育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。 正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。 部員数は二名。 部長 超絶美少女系ぼっち、南郷楓 副部長 超絶美少年系ぼっち、北城多々良 これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

俺たちの共同学園生活

雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。 2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。 しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。 そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。 蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?

処理中です...