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二年生の一学期
第百十六話 もうすぐ東北
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ラップサンドが出来上がる前に、務が言った。
「でも、なにか飲みたいね。テイクアウトで飲みながら行こうか?」
「じゃあ、あのハーブティーにする?」
春樹はそう言ったが杏奈は、白い半そでのポップコーンニットのサマーセーターを直して別の要望を伝える。
「室内がいいなぁ、結構日差し強いし。それなのに小沢さんの言う通り、少し肌寒い。こんなに気温低いとは思わなかったから、実は着てきたのサマードレスなの」
そう言って、黒いロングスカートをはためかせた。
「南ちゃんも、いつの間にか上に着たしね」奈緒が付け加える。
下車した時、南の格好はベージュのTシャツ姿だったが、今は薄い灰色のスウェットを着ていた。
「俺らもちょっと寒いよな。下はTシャツ一枚だから」春樹が、木製ボタンの白いニットジャケットのポケットに両手を突っ込んで、務に問う。
「そうだね、成瀬さんもコーヒー飲みたいみたいだし、時間もまだ十一時くらいでしょ? おばあちゃんのうちも近いっていうし」
伺うように視線を向ける務に、南が即答した。
「分かんないけどね」
そして、ガラスの壁に頭をぶつけたような顔をするみんなから顔を背けて、言葉をぽろりと伝える。
「小さかった頃に来ただけだから、なんとなくだし」
「そんなので、たどり着けるの?」杏奈が驚いて訊く。
「だいじょぶ、だいじょぶ、歩いてるうちに思い出すと思うよ、きっと。とりあえず住所は分かってるし、スマホで検索すればなんとかなるでしょ。お茶はうちについてから出すから、先に行っちゃおう。最悪、迷子になると時間かかるから」
みんなは、けらけら笑う南を見つめたまま閉口した。
プラスチックカップに入れられたラップサンドを受け取った奈緒が芝生と歩道の境目まで来ると、道路の向こうを見やって立ち止まる。
「パン買っていく」
奈緒が見やる道路の向こうには、黒い古民家をリノベしたようなガラス張りのお店があって、数人が外に並んでいる。
それを遠望した南が、意外そうに呟く。
「どこで? ほんとだ。あんな店できたんだ、なんかおしゃれ」
奈緒がせがんで南の腕を引くと、それを引き返した彼女が続ける。
「もうお昼近いし、やめとこ。おばあちゃんが、ごはん用意してくれるって言ってたから、食べられなくなるよ」
「やー、パン買ってカフェによって、ピザ食べて帰るー」
大声で叫んだ奈緒は、地平線のかなたまで駆け抜ける勢いで走っていった。
「でも、なにか飲みたいね。テイクアウトで飲みながら行こうか?」
「じゃあ、あのハーブティーにする?」
春樹はそう言ったが杏奈は、白い半そでのポップコーンニットのサマーセーターを直して別の要望を伝える。
「室内がいいなぁ、結構日差し強いし。それなのに小沢さんの言う通り、少し肌寒い。こんなに気温低いとは思わなかったから、実は着てきたのサマードレスなの」
そう言って、黒いロングスカートをはためかせた。
「南ちゃんも、いつの間にか上に着たしね」奈緒が付け加える。
下車した時、南の格好はベージュのTシャツ姿だったが、今は薄い灰色のスウェットを着ていた。
「俺らもちょっと寒いよな。下はTシャツ一枚だから」春樹が、木製ボタンの白いニットジャケットのポケットに両手を突っ込んで、務に問う。
「そうだね、成瀬さんもコーヒー飲みたいみたいだし、時間もまだ十一時くらいでしょ? おばあちゃんのうちも近いっていうし」
伺うように視線を向ける務に、南が即答した。
「分かんないけどね」
そして、ガラスの壁に頭をぶつけたような顔をするみんなから顔を背けて、言葉をぽろりと伝える。
「小さかった頃に来ただけだから、なんとなくだし」
「そんなので、たどり着けるの?」杏奈が驚いて訊く。
「だいじょぶ、だいじょぶ、歩いてるうちに思い出すと思うよ、きっと。とりあえず住所は分かってるし、スマホで検索すればなんとかなるでしょ。お茶はうちについてから出すから、先に行っちゃおう。最悪、迷子になると時間かかるから」
みんなは、けらけら笑う南を見つめたまま閉口した。
プラスチックカップに入れられたラップサンドを受け取った奈緒が芝生と歩道の境目まで来ると、道路の向こうを見やって立ち止まる。
「パン買っていく」
奈緒が見やる道路の向こうには、黒い古民家をリノベしたようなガラス張りのお店があって、数人が外に並んでいる。
それを遠望した南が、意外そうに呟く。
「どこで? ほんとだ。あんな店できたんだ、なんかおしゃれ」
奈緒がせがんで南の腕を引くと、それを引き返した彼女が続ける。
「もうお昼近いし、やめとこ。おばあちゃんが、ごはん用意してくれるって言ってたから、食べられなくなるよ」
「やー、パン買ってカフェによって、ピザ食べて帰るー」
大声で叫んだ奈緒は、地平線のかなたまで駆け抜ける勢いで走っていった。
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